1.翡翠との出会い

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会社を出てフラフラと歩いていると、いつもの仲間たちとのたまり場である、六本木にあるとあるパーティルームに自然と足が向く。 室内に足を踏み入れると、暗い照明の中でいつものメンバーがいつものように、はしゃいで過ごしている。 だから、俺もいつものように部屋の中心にある大きなソファに座った。 机を取り囲むようにして設置されたこのソファには、若い男女が十人ほど座っている。早速杏子が俺の隣に座った。 「光一君、やっほ」 「杏子、聞いてくれよ。会社の金を横領した罪なすりつけられてさ」 さっきまであんなに自分勝手に楽しんでいた奴らが、一斉に静まり返り俺を見た。 一番仲のいい杏子が話にくいつく。 「何それ?」 「祐樹っているだろ?親父の再婚相手の息子。そいつに嵌められた」 「それで、どうなんの?」 「会社クビになるし、マンションからも出ていけって言われるしさ」 俺以外の全員が顔を見合わせる、そして杏子は俺を慰めるわけではなく、励ますわけではなく、怒るわけではなくこう言った。 「この間、香港旅行したときにさ」 「聞いた!ジャッキーと会ったんでしょ?」 俺を居なかったことにしたのだ。 金も名誉もない俺には何の用もないらしい。 パーティルームを後にして、朱里の待つ家へ戻る。朱里なら俺を心配して、これこらどうするか考えてくれるはずだ。 玄関のドアを開けた。 「ただいま」 すると朱里は、見たこともないような大きな鞄を持ち靴を履いている。 「どこいくの?」 「会社の金パクってクビになったんでしょ?今までありがとう!元気で」 「えっ、え、朱里は、何があってもずっと俺を好きでいるって」 「そんなわけないでしょ。あんたから金取ったら何が残るのよバーカ。母ちゃん母ちゃんうるさいんだよ!マザコン野郎!」 朱里までもが足早に玄関から出ていく。 ただ一人残された俺は、玄関に寝転び、目を閉じた。どうしていいのかわからない。    
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