1.翡翠との出会い

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幼い頃の俺と母ちゃんが布で石を磨いている。 「見て、この石ピカピカになった」 母ちゃんは俺を見て微笑んだ。 「光一っていう名前はね、この石と同じ。磨けば磨くほど、ピカピカ光って一番って意味なのよ」 「じゃあ、ぼく、たくさんみがいてピカピカ  の一番になるね」 母ちゃんはゆっくり頷いた。 目が覚めると玄関に寝ていた。 母ちゃんはいない、朱里もいない、一人ぼっちだった。 「俺、バカだから磨き方がわかんねぇよ」 そう呟いて再び、目を閉じる。 このまま永遠の眠りにつきたい。 しかし、すぐにお腹の音が鳴り目が覚める。 夜の8時を過ぎているというのに、マンションからほど近いハンバーガーショップは幸せそうな家族、恋人たち、友人グループで溢れていた。 俺だって、母ちゃんこそいないけれど、ついさっきまでは、あっち側の人間だったはずなのに。 ため息をつくと順番が回ってきた。スペシャルセットを頼み、スマホで決済する。 ところかレジを通らない。 店員がニコニコ顔でこう告げた。 「この決済は使用できませんね」 父ちゃんは仕事も辞めてマンションからも出て行けと言っていた。俺に一円も使う気はないようだ。 財布にかろうじてあった現金で払う。 そして財布には残り531円しかないことに気がついた。 「ありがとうございました」 甲高い店員の声を背に、夜の公園で泣きながらハンバーガーを食べた。 俺が頼れるのは地球上を大規模な軍で捜索しても、あと一人、あいつしかいない。
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