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「要するにアレだよ、アレ」と、パールが
口を挟んできた。
「『花咲か爺さん』の昔話、知らない?」
タイトルに覚えはあるがストーリーは憶えていない。
ポケットからスマホを取り出してググってみれば、
「犬がなんだか可哀想」というか、正直に生きてれば
いいことあるよと教えられるお話である。
「その正直者の老夫婦が、僕のご先祖に当たるのだ。
毎年、秘密裏に紗倉家がゴーサイン出して、
気象庁が開花宣言を発表する仕組みになっておる。
ただ気候の良し悪しだけで、開花時期は決まらない。
私の一族は、全国にそれぞれ担当地区があって、
桜の声を聴いているのだ。
決して彼、彼女等に無理をさせてはいけないという
掟に則り、
咲きたい時に咲くがよろしと、呼びかけるのだ。
さすれば桜達は、合図を寄越すのだよ。
そして紗倉家の一族にだけ、その声は届くのだ」
パールも、その昔話で、隣の欲張り夫婦に虐待された
可哀想な犬の末裔だということだった。
「元々、俺の先祖もスピリチュアルなパワーを
授けられてたんだ」ってことで、一旦死んでみせたが
後に再生したらしい。
「で、代々、紗倉家の執事を務めることになったって
わけさ」と言った後で、パールはペットボトルの水を
ねだってきた。
あまりに奇想天外な話に、誰が着いて来れるだろう?
私しか居ないと、年の割に器の大きい櫻子は、
「分かりました、決して口外致しませぬ」と、
これまたキャラを紗倉に、寄せておいたのだった。
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