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小気味よく一定のリズムでタッタッタと走る犬に
着いて、とうとう校門前まで来てしまった。
ついで近くの信号機が青に変わるのを足踏みして
待つと、犬はなんと向かいの城の構内へ誘って来るの
である。
「いや、待って、これ以上は無理だから」
すると、哀しげに丸い黒い瞳を潤ませながら、犬は
「えっ?ここまで来たのに」と言ってきた。
「えっ?シロ、あんた喋った?」
「シロなんて呼ばないでよ、てかもっとキラキラした
名前にしてくれよ」
その声は、男子だったので、
「あーじゃあパール、パールでいい?」
白い犬なので、櫻子は咄嗟に、パールと名付けた。
「お、いいやん?最近のカッコいいアイドル系男子は皆、真珠のネックレス着けて踊ってるよね、
ほな行こか」と、横断歩道を渡り出した。
喋る犬になんて、CM以外で、滅多に遭遇できるわけ
ではないしと、櫻子も腹を括った。
それに彼女は、涙無くしては見られない動物愛護系の
動画を見過ぎた影響からか、
捨て犬を見捨てられなくなっていたのだった。
「あ、パール、待ってええ」。
櫻子は、パールに従った。
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