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夜の空気は、ひんやりと心地良い。
「私、さっきからけっこう走ってるわ」
それに、もう一つ気がついたことがある。
今、走っているこの道、確か今日、学校で知らされた
今年の『お花見マラソン』のコースだ。
毎年同じじゃ面白くないと、微妙にコースを
変えてくるのだ。
櫻子が、城構内に入ってかれこれ1kmは走ったん
じゃないのと、思った矢先、片隅の物置きらしき建物
の中から人が一人、出て来た。
「よお、樹。ワンワン」と、パールが
呼びかけた。
頭にピンクのタオルを巻いた作業員らしき若い男が
近づいて来た。
思わず、後さずりする櫻子だったが、その警戒心は
彼が明るいライトに照らされると、
すぐさま、興奮に変わった。
「さ、紗倉先輩?う、うそー」
なんと怪しげな男は、1学年上の憧れの先輩、
昨年度の二学期に転校してきたのだが、瞬く間に、
教師を含む学校中の女子のハートを掴んだといっても
過言ではなかろう、早速、数々の伝説まで
巻き起こしたほどの、超絶バイリンガルイケメン
紗倉 樹だったのだ。
「な、何ゆえ、紗倉先輩がここに?」
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