2日目

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2日目

翌日、目を覚ました櫻子は筋肉痛だったが、 眠気が覚めるにつれて、これこそ、昨夜の出来事が 夢ではないことの証だと、一層気を良くした。 「明日の夜、また迎えに来るよ」と、パールに 言われていた。 今夜また、紗倉先輩に会えるのだと思うと、それまで 顔が勝手にニヤけてくるのを止められるだろうかと、 洗面室の鏡で、表情を固くして、確かめた。 紗倉は別れ際、 「このことは絶対秘密だよ?約束だよ」と、しっと、 人差し指を立てて見せたのだが、 櫻子は、その声と仕草を思い出すと、クラクラと 倒れそうな気分になった。 それは、他の誰でもない、櫻子だけに向けられたもの だったからだ。 早く夜にならないかと、授業中も気もそぞろな櫻子 だったが、とにかく 隣の席のマミにだけは表情を読み取られまいと、 「ちょっと喉が痛い」と、マスクを着用した。 マミは、涙袋を描くのが上手過ぎる、クラスの広報 担当だ。 紗倉先輩の教室とは、階が違うので、なるべく教室 から出ないようにして、今日ばかりは清楚系読書女子 のキャラを編み出し、時をただ無駄にやり過ごした。 放課後は速攻で家に帰ると、マミの手法を思い出し ながら、初めての涙袋を描いてみた。 まつ毛をカールし、前髪とサイドの髪を念入りに 選り分け、整え終えると、店に顔を出し、 頃合いを見て、店主である父にねだって、 元祖お好み焼き店『本郷』の名物メニュー、(たかし)スペシャルを焼かせた。 友達とマラソン上位目指して特訓するのだと嘘をつき、 (タカシ)スペシャルを2枚携えて外に出ると、 いつの間にかパールは待ち構えていて、 鼻をくんくんと鳴らして、纏わりついてきた。 「パールの分もあるから」と、櫻子が言うと、 「気が効くやん、ほな行こか」と、パールは昨日より 心持ち、初速を早めて、彼女を誘った。
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