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ぬるめのシャワーを浴びながらさっきまでの緊張から解放された全身をゆっくりとマッサージする。小さめサイズのコンプレッションウェアが私の身体のあちらこちらにステッチの跡を残している。やがて素肌は紅潮してそれが冷める頃にはその跡も薄れているだろう。
そしてシャワーの後にはふんわり柔らかいバスタオルに身を包みながら熱いコーヒーを飲もう。こんな気分のときは軽めのアメリカンスタイルがいい。
軽く目を閉じてそんなことを想像していると彼と別れたことを報告に行ったときの父の言葉を思い出す。
「小さいときに母親を失くして以来お前を男手ひとつで育ててきたが、お前には何か欠けているものがあるんじゃないかって、父さんは心配していたんだよ」
私に欠けていたもの、それは母親の抱擁と温もりだったのかも知れない。
彼にそれを求めたのも、今こうしてフィット力が高いウェアを好むのも、そしてそんなウェアに拘束されることに快感を感じてしまうのも、みんなみんなそれが理由なのかも知れない。
それでもいい。私は今のこの生活に満足しているし、いつかは私を理解してくれる人が現れるかも知れない。それまではたった独りでこの密かな楽しみを満喫していればいい。
そう、理由はどうあれ私は私、これでいいのダ。
フェティッシュ・ヴァリエーション:Case02
セカンドスキン症候群
―― 幕 ――
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