隠し事

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男は自動販売機で飲み物を買ってくると私の隣に座った。 「いやー冷えてきたね。寒いのは苦手でね。この季節が恨めしいよ。あ、コーヒーとお茶どっちがいい?」 「お茶で。ありがとうございます。ええと・・・」 「鈴本。鈴本大輔。双子の弟は理来だ。」 「それで鈴本さん。理来さんは今どこに?」私は一番気になることを聞いた。 「それが、それこそ3日前に事故で死んだんだ、車で崖から転落して。今思えばひき逃げして相当慌てていたのかもしれない。」鈴本さんは遠くを眺めながら話している。 「昔からやんちゃなところがあったんだ。理来がやんちゃするから僕がしっかりしなきゃ、なんて考えて生きてきて。性格は反対だったけど、とても仲が良かったんだ。隠し事なんて一つも無かった。でもひき逃げを起こした挙句、崖から落ちて死んじゃうなんて・・・」缶コーヒーを持つ手が若干震えているように見えた。鈴本さんは私の視線に気づくと、はっと我に返る。手はポケットの中にしまってしまった。 「ごめんね。被害者にこんな話はするべきではないね。3日前にひき逃げに合ったんだよね?それで君の友達は亡くなってしまった。まず弟に変わって謝らせてくれ。」鈴本さんは深々と頭を下げる。 「いえいえそんな。頭をあげてください。あなたに轢かれたわけではないですから。」 「かたじけない。ところで今日は平日だけど、学校は?高校生だよね。もしかして傷がまだ癒えてないとか・・・。」 「いえ、事故で負った傷は治ったんですけど、気持ちの整理が追い付かないんです。萌香は幼稚園から一緒で・・・」
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