隠し事

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私は高校でいじめを受けていた。一つ一つの嫌がらせは小さなものでも、蓄積すると大きな苦痛に変わる。しかし私には萌香がいたし、彼女と話していれば辛いことも忘れられた。 なのに・・・。 つい最近だ。萌香が私をいじめているグループと一緒に話しているのを見かけた。それどころか、次に私にする嫌がらせの内容について話して盛り上がっていた。私は萌香を親友だと思っていたけれど、萌香は私をただの邪魔ものだと思っていたらしい。目の前が真っ暗になった。その日の帰り道、萌香を突き飛ばして車に轢かせた。 最初は後で私も死のうと思っていた。いじめの主犯だったとはいえ、長い間心の支えであったことは変わりないから。でも、いざ萌香が死んだら、死ぬのをやめようと思った。萌香が死んだことによる悲しみなど、憎悪で塗りつぶされてしまった。これからは一人で、好きなように生きる。現実からも自分の心の中からも消した。不思議と清々しい気分だった。 問題は車の運転手だ。私が突き飛ばしたところを見ているかもしれない。始末しなければ。 でもその心配もなかった。すでに死んでいたのだ。兄の鈴本大輔も真実は知らない。万事うまくいった。カバンの中の包丁も出番なしだ。
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