さくら前線、ここまでおいで!

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今日は高校の球技大会なんですけど、私、雛乃〈ひなの〉は一人教室にいます。なんでかって?察してください。私の席は教室の窓側なんですが、窓からは高校の合格発表の様子がみえるんです。 あ、一番目の受験生がやって来た!受験番号探してる探してる。お!?ガッツポーズしてる、受かったのかな?おめでとう!!!  『サクラ咲ク』って言うのはこのことだ。これも一種の『お花見』か?なんちゃって。 暇なので違う高校の友達のSNSの投稿を漁る。え!?彼氏ができた?1年半ずっと好きだったっていってたもんねおめでとう!!!こっちでも『サクラ咲ク』。みんないいなー!私なんかもう高校二年生も終わるのに模試の合格判定はいっつもD、彼氏どころか好きな人ができる気配もない。私にも誰か『春』を運んできてー!って心の中で叫ぶ。 もういいや、寝よ。いつもは優等生やってて学校で寝るなんてもっての外だけど、今は誰もいないし。顔を伏せて。おやすみ。 結構寝ちゃったな…。今何時だろう。顔を上げようとしたけど、誰か教室に入ってきた!?わあ最悪だ。この声はサッカー部のイケイケ系の男の子3人だ。確か、今前の席の澄春〈すばる〉くんと…、他の二人は違うクラスか?名前分からない。あ、澄春くんは運動神経抜群で性格もいい、おまけにすごくかっこよくて女子に大人気だ。ってそんなこと今はどうでもいいから早くどっか行ってくれー。それまで頑張って寝たふりしよ。 「すばるって、バスケもできるのな!」 「運動神経だけが取り柄なんで。」 「いいじゃんモテてるんだから、バレンタインなんて後輩からすごい貰ってたし。」  「でも本命から貰えなきゃ意味ないもん。」 「あぁ、あの子?ひなのちゃんだっけ?」 「しっ!本人いるから聞かれたら終わり。」 ん?それはどういう???私が本命!? まさかね?我ながら気持ち悪い聞き間違えだ。って近づいてくる~!あぁ、前の席に座った…。他の二人は斜め前と横に。完全に包囲された。 「いっそのこと告ればいいじゃん。」 「無理だって!多分認識されてないから。」 「それはないでしょ。席前後なんだし。」 !!!完全に私のことだ…。今動いたら聞いてたことがバレる!ここで動いたら終わり。 「ほんともう毎日可愛すぎて死にそう…。」 「いや、それ好きすぎるでしょ!」 澄春くんが私の机の方に椅子ごと体を向かっけたっぽい。近づかないで、起きてるのバレるって!私の机に腕をのせたのが気配で分かる。もしかして今、顔すごく近いんじゃ! 「うん、大好き…。」 これには思わず肩がびくっとなってしまった。これは絶対バレた。 「も、もしかして…、全部聞こえてた…?」  うん、最初から聞こえてた。盗み聞きじゃないけど謝らないとだよね、 「ごめん…。」 「俺ら一旦教室戻るわ!じゃ、すばるまた後で。」  「頑張れよ!」 えぇー何で行っちゃうの、二人きりにしないでよ! 「全然話したことないのに好きとか気持ち悪いよね…。ごめん、さっきのことは忘れて。」 別に気持ち悪くはないけど、って伝えとこ。 「気持ち悪いとかは思ってないですよ…。」 それに私だってほんのすこーしだけど友達になりたいなーって思っちゃったことある訳だし。 「実際、みんなと同じで私もすばるくんのことかっこいいって思ったし。こんな私のくせに、仲良くなりたいと思っちゃったことあるので。」 「ほんとに?」 お、明らかに表情が明るくなった。表情がコロコロ変わるタイプのわかりやすい人だ。 「うん、ほんと。」 「それならさ、ほんとに図々しいこと言うけど。よかったら明日の放課後一緒に遊びに行きませんか?」 「はい。」 って反射的に返事しちゃった。ていうか何この急展開!めっちゃ嬉しそうじゃん前の人! 「やばい、うれし…。」 私の机に顔を伏せて喜びをかみ締めてる澄春くん。 急に顔を上げて、私を見上げたと思ったら心底嬉しそうに微笑んだ。 まるで、人懐っこいゴールデンレトリバーだ。かわいい。 え?かわいい?はじめて思ったかも。 これって私にも『春』が来た?  『サクラ咲ク』んじゃない?? ―さくら前線が急速に迫ってきてます。       もうすぐお花見できますよ!―
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