予言が幕切れを迎える時

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予言が幕切れを迎える時

 聖アミスト王国。  元々は大陸のすみっこにある小さな小国でしかなかったこの国が大国まで成長できたのは、ある特別な力を持っていたからだった。  この世界に、魔法を使える人間は多いし、高い科学技術を持つ国もたくさんある。しかし、一つだけ、人間には簡単にできないことがあるのだ。  それが、未来の情報を知ること。  科学が進んである程度の予測はできても、正確な未来予知は困難を極める。しかしアミスト王国には代々未来予知ができる特別な魔法が伝わっており、それにより数々の危機的状況を回避することに成功してきたのだ。  未来を知る魔法は、一子相伝。  親から子へ伝わる、この国の柱ともなるべく特別な力。  その力を持つ彼等彼女等は王国付きの“国選占い師”として雇われ、国の大きな危機を予言し続けてきたのだった。その力によって、大地震が起きた時は予め重要な建物を補強したり人々を避難させることによって被害を軽減することができ、よその国が打ち込んでこようとしたミサイルから土地を守ることに成功するなどしてきたのである。  ところが今。聖アミスト王国は前代未聞の危機を迎えていた。  当代の国選占い師である三十六歳の女性、バーバラがある日、旧知の仲である王様にこんなことを言い出したのだ。 『のう王様よ!本で読んだのじゃがな、よその国にはエイプリルフールなるイベントがあるそうではないか。四月一日には、どんな嘘をついても構わんそうじゃな』 『え?び、微妙に違う気がするけど、まあ……そんなかんじ、か?』 『実に面白い!妾もそれを実践してみたいぞ。もうすぐ四月じゃ、四月一日に、妾も愉快な嘘をついてみたいと思う!』  まさか、と王様は冷や汗をかいた。しかし、意地っ張りで愉快犯なバーバラはそんなこと気にも留めない。  あっさりと爆弾を投下してくれたのだった。 『四月一日、妾はいくつかの予言をしよう!その中に一つわざと嘘を混ぜることにする。そなたらは、どれが嘘なのか当ててみるといい!これは面白いクイズになるぞ!』 『は、はい!?』  それは困る。非常に困る。王様は椅子から転げ落ちたのだった。
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