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うどんの上には、ふわふわの卵、カニカマと小葱が乗せられている。シンプルではあるが、その色鮮やかな見た目と香りは食欲をそそった。二人で手を合わせ、私は麺を啜った。舌先に広がる優しい味に思わず、「美味しい」と言葉が漏れる。
「良かった。サトミちゃんは何でも美味しそうに食べるよね。そういうとこ、好きだわ」
アキラくんは満足そうに顔を綻ばせる。私は少し恥ずかしくなって箸を止めた。でも、同時にアキラくんがそう思っていてくれて嬉しくも感じた。もしかしたら、彼ならばありのままの私を受け入れてくれるのではないだろうか。そんな淡い期待を胸に抱いた。私は膝の上に置いた手に力を込めた。
「アキラくんはさ、たくさん食べる女の子ってどう思う?」
「え? なんで?」
「いや、ちょっと気になって」
「そうだなぁ……健康的だし良いと思うよ。俺、食べるの好きだし、最近は作るのも好きだし、美味しいもの一緒にたくさん食べれたら、すごく幸せだと思う」
私はその言葉を聞いてほっと胸を撫でおろした。強張っていた身体から力が抜けていくのを感じた。一呼吸置いて、私は告げた。
「実は、私、すごく大食いなの……でも、今までそのこと隠してて。その、これからは、アキラくんと一緒にたくさん美味しいもの食べたいの! いいかな?」
アキラくんはこれ以上にないくらい満面の笑みで、大きく頷いた。私もつられて頬が緩む。
もう、食べることを我慢しなくていいんだ。隠さなくていいんだ。そう思ったら気が楽になった。何を作ろう? 何を食べよう? アキラくんと過ごす時間は美味しくて心もお腹も満たされるに違いないだろう。
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