兄さんの彼女は今日もつめたい

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 人けのない小さな公園に入ると、ベンチの上に、乱暴に下ろされた。ユキさんは腕組みをして、僕を見下ろしている。 「それで? どうしてあの場所にいたの? 私の後をつけてきたの?」 「違うよ! 本屋に行って、帰る途中だったんだ。偶然だよ」  ユキさんの目が冷たい。また、肌を突き刺すような冷たい風が纏わりついてくる。  ——あ。全然信じてない。 「本当だってば! 大体、なんで僕がユキさんの後をつけなきゃいけないんだよ!」 「だってあなた、会う度に私のことを気にするじゃない。気付いてるんでしょ?」 「気付いてるって、何に? 僕はただ、なんで僕にだけいつも冷たいのかって——」 「冷たい……?」  ユキさんの目が険しくなった。怒らせるようなことは、何も言っていない気がするけれど。 「ユキさ——」 「雪……?」  ——えぇー!! なんか暗殺者みたいな目をしてる! なんで!? 「やっぱり、気付いていたのね……」  急に冷たい風が吹いて、ぎゅっと目を(つむ)瞑った。一気に身体が冷えてガタガタと震えている。何が起こったのだろうか。  目を開けると、白い雪がぶつかってくるのが見えた。なぜか、僕の周りだけが吹雪いている。 「何これ!」 「バレないようにしていたはずなのに、まさか、気付かれるなんて。だから嫌いなのよ、子供は。このまま帰すわけにはいかないわね」 「えぇえ!? 自分で言ったんじゃん!」 「さて、どうしてやろうか……」 「ち、ちょっと待ってよ! 状況について行けてない。説明してよ!」 「チッ」  ——うわ、舌打ちした……。兄さんの前では絶対にやらないくせに。 「とぼけないでよ、気付いてたんでしょう? 私が普通の人間じゃないって」  たしかにこんな吹雪を起こすなんて、人間にはできない。そんなことができるとしたら——。 「もしかして、雪女……?」 「ほら、やっぱり気付いてたんじゃない」 「今、気付いたんだよ! どう見ても、僕の周りだけ吹雪いてるから!」 「私の正体、誰かに言ったの?」 「だから、今知ったんだよ!」 「……本当に?」 「本当だってば!」  ユキさんは(あご)に手を当てて、僕のことをじっと見つめている。  ——めちゃくちゃ疑うじゃん。 「まぁいいわ。でも、もしバラしていたら……」  ——バラしていたら、何!? 怖いんだけど。  それにしても、兄さんの彼女が雪女だなんて。もしかすると、兄さんに何かをするつもりで、近付いたのかも知れない。 「ユキさんは、兄さんをどうするつもりなんですか」 「どうって?」 「雪女は 人間の男を殺すんでしょう?」
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