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「あぁぁーっ! つるつるいっぱいになっつんた!」
長谷川君が今まで見たことないくらいに動揺している。
「……つるつる?」
聞いたことがない言葉に、思わず首を傾げる。
「どうしょう……こんなつるつるいっぱいじゃ、渡せんし」
んん?
明らかに長谷川君の言葉がさっきまでと違う。
ひょっとして動揺して、方言が出てきたのかな?
「ねえ、長谷川君。『つるつるいっぱい』って、何?」
「あ……」
やっぱり無意識だったみたいで、思わず口を手で押さえる。でも隠しきれない照れ顔が、かわいいんですがっ!
はぁーっと息を吐いて、長谷川君は観念したかのように肩を落とした。
「これ」
そう指さしたのは、溢れんばかりなみなみに注がれたコップ。
「福井ではコップすれすれの事を『つるつるいっぱい』って言うんだ」
「へぇー!」
コップの状態のことだったんだ!
「っていうか長谷川君、福井の人だったんだ」
「……うん」
「なんでそんな恥ずかしそうなの?」
「いや、東京出たら方言話すまいって思ってたから」
俯いてボヤく様が可愛くて思わず、ふふっと笑ってしまった。
「やっぱ、おかしい?」
「ううん、かわいい」
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