気になる彼が、かわいすぎます

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「ふふっ、もう『つるつるいっぱい』じゃないね」 「ほや。もう安心して持てる。飲む?」  ちょっと得意げにコップを持って私の方へと渡す彼。  え? これ、今あなたが飲んだやつじゃん。それはつまり……!  動じないって事は、やっぱり女の子には慣れてるの⁉︎  それともこれで動揺する私がおかしいのー⁉︎ 「あ……ごめん。やっぱり俺が飲む」  戸惑った私を見て意味に気づいたみたいで、再び顔を真っ赤にした彼が一気にコップを煽った。  なんだ、気づいてなかったのか。かわいいなぁ。 「ねえ、気分転換にご飯食べにいこう! うどん食べたくなっちゃった」 「唐突やのお」 「だって『つるつるいっぱい』ってなんだか啜る音みたいじゃない? だんだんお腹空いてきちゃったんだよね」 「それ、つるつるだけやろ?」  クスッと笑いながらも、長谷川くんが机の上を片付けはじめる。 「食堂行く? それともこの辺散策して探す?」 「んー、肝心な履修登録しとらんし、食堂行ってまたラウンジ戻るんでどうやさ?」  もう隠す気もなさそうな方言に、距離が縮まったみたいで嬉しくなる。 「うどんっ、うどん!」 「坂井さん、うどん派なんや。俺、蕎麦の方が好きやざ」 「あ、福井って越前蕎麦が有名なんだっけ?」 「ほや。今度あげるさ」 「あーっ! ますますお腹空いてきた! 早く片付けて食堂行こう!」  シラバスも手順の書類も全部勢いよくトートバッグにつっこんで立ち上がる。 「坂井さん、早いって」  春の陽気に負けないくらい、ぽかぽかになった私の心。後ろからついてくる照れ屋でかわいい彼の手を思わず繋ぎたくなったのを誤魔化すように、後ろ手で自分の両手をぎゅっとして、彼の方へと振り向いた。
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