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「ええっ、私は白雪ちゃんを迎えに来たんだよ!」
「うるさいうるさいうるさーい! あんたは茨姫と結婚してラプンツェルを側室にして子どもたちを認知しなさい! クズはもうイヤ!」
(あなたの横に立っている無表情な男もかつてクズでしたよー。)
と思いながらドラキュラ伯爵とカーミラは口をつぐんでいた。少なくとも今は真面目(?)だし。
どうだっていいし。
「マーリンはどうなのじゃ?」
女王が尋ねると、マーリンと呼ばれた司書は少し考えて答えた。腕にしがみついている白雪姫はウルウルとした目でマーリンを見上げている。
「可愛いと思いますよ。魔法も頑張って勉強しているし。」
「魔法を……?」
女王が目を見開いて顔を上げた。
「そうよ、シンデレラっのっ、結婚式でっ。」
話しながら泣き出した白雪姫は爆発した。
「うわあああん!! 私だってお母さまの娘だから! 魔女の素質あるから! 魔法が使えるようになったら褒めてくれるって……えぐ……思って…………えぐぐぅ。」
息継ぎがうまくできないほど嗚咽する白雪姫の背中を、マーリンが優しく撫でた。
「お母さまはいつも忙しくて……私はお勉強ばっかりで……。だからちょっと家出したの。なのにお母さまは紐やら櫛やら贈ってくるばかりで迎えに来てくれなくて……。でも小人たちは甘やかしてくれたの。」
「姫……。」
女王が申し訳なさそうに眉を下げた。
「りんご食べてうぇってなって気がついたらヘッセン王子がいて『君は私のお嫁さんになるんだよ』って。正直、気持ち悪って思ったけど。」
「えっ。」
ショックを受けているヘッセン王子をドラキュラ夫妻その他一同は冷めた目で見る。
「お勉強もしなくていいからって言うからついて行ったのに、向こうの王さまと王妃さまから『お妃教育』だってウソばっかり! 意地になってヴィルドゥゲン王国にも帰らずに頑張ってたら、茨姫をいきなり連れて帰ってきて! クズがっ。その上子どもがいるってなに!? うわあぁん!」
そりゃ仕方ないわ、と周囲にいる人たちはヘッセン王子に視線を集める。
「ハーメルンの笛吹き男から伝令が参っております!」
「通せ。」
「失礼いたします。笛吹き男のネズミ二十八号です。笛吹き男からの伝言を伝えます。『バジーレ王国の中央教会は、先日のドラーレ公爵夫人との話し合いを国王と協議した結果、国王に茨姫の居場所を明かすことにした。茨姫はバジーレ王国唯一の世継ぎであるため、既にバード王国に向けて迎えに立ったと。」
「バジーレ国王にしては行動が早いじゃない。」
カーミラが首を傾げる。
「城内が完全に覚醒しました。そのため、教会と城内が百年の齟齬を解消した模様です。」
バジーレ王国は国王と教会が手を取り合い、正常化に向かうようだ。
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