小人登場

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 王子がそのまま白雪姫をバード王国に連れ帰ったと聞いた女王は驚き、使者と迎えを送ったが、白雪姫が『絶対に帰らない』と駄々をこねたのと、王子が白雪姫にゾッコンで後の王妃になると聞き、本来ならばバード王国からの正式な申し出が必要であるにもかかわらず静観することになったのだ。  気が変わったらいつでも迎えに行けるようにして。    それにしても、あんなに世話になった小人たちをあっさり捨てていくのもどうなのか……。  女王は後でこっそりと人を介して小人たちにお礼をした。  *  そして白雪姫は戻ってきた。  ぶりぶりと怒りながらいきなり帰ってきた。  手紙を送っても梨の礫だったのが、六年経って帰ってきたのだった。  * 「というわけで、姫を誘惑するのは私の手に余ります。ではこれで失礼いたします。」  ドラキュラ伯爵がマントを翻し、優雅にお辞儀をして踵を返そうとした時。   「待て。」 「え……。」  勘弁してくれという顔で伯爵が振り返る。 「申し訳ございません、女王陛下。昨夜からずっと起きてるので、寝ようかな、と。」 「このままヘッセン王子との婚約を解消しないままにしておくわけにはいかぬ。」 「そうですね。しかし国同士の問題でもありますし、ヘッセン王子が茨姫と結婚したいから婚約解消してほしいと言ってもバード国王も教会も認めないでしょう。教会には両国から申し出ないといけませんしね。それにこちらは大国。あちらにとっては繋がりを保ちたいところでしょうし。……ここは宰相殿が知恵を出せばいいのではないですか?」  女王の背後で宰相が「えっ」という顔をしている。   「それに女王陛下もまだまだお若いですし(魔女ですし)ディルク殿下もいらっしゃるので急ぐこともないかと。」  そこで宰相が発言した。 「女王陛下、バード王国は重婚が認められておりません。このままではどちらかが側室になると思われますが、国の規模から言って我が国の白雪姫さまが正室となるのは確実でしょう。この件で『いかなる場合も内政干渉はしない』と条件をつければよいのです。なので、やはりバード王国の王子の元に帰るように説得してみては?」 「やすやすと説得に応じるものか、あれが。生まれた時から反抗期だ。」  ドラキュラ伯爵は吹き出しそうになったのを耐えた。  女王はしばらく思案して口を開いた。   「バジーレ王国の城の眠りが覚めたのは一か月前か。交流は?」 「国王以下眠りについたことで教会が統治していました。教会を通して交流がありましたが、眠りから覚めたことが伝わってきておりません。彼の国からも未だ使者は来ておりませんね。」 「密偵を送り、内部を調査しろ。できることなら引き入れたい。バード王国には遅れを取っているかも知れぬが。」
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