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確かに甘やかして育てた自覚はある。
姫が四才になった頃に弟のディルクが生まれ、その後すぐに国王である夫が崩御した。
弟王子が成長するまで王妃が女王となり、出産後の体調も戻らない間、記憶に残らないほど働いた。
重臣たちに足元を掬われないよう侮られないよう、……義兄と夫が遺した豊かで平和な国を守るために。
まだまだ甘えたい盛りの幼い白雪姫は、急に忙しくなって会えなくなった母や召使いたちの気を引くために癇癪を起こしたり、ちょっとしたウソをついたりして周囲を困らせた。
周りもそれを『はいはい』と聞いたり、機嫌を取るために欲しいものは与え、女王の仕事の妨げにならないように気をつけたのが悪かった。
姫はどんどんわがままになっていった。
それでも女王は時間を作り、朝食の時や夜の眠りにつく頃には顔を見て話しをするようにしていた。だがそれでも姫の寂しさを埋めることはできなかったのだろう。
姫がバード王国に戻りヘッセン王子と仲直りしたいのならそれでもいい。だが、このままヘッセン王子と別れてこの国に戻るのであれば、最初から育て直してやりたいと思う。
しかし難しい年頃に加えて六年も離れて暮らしていたので、どう接すればいいのかわからない。
本音ではきちんと向かい合って話がしたいが、女王も白雪姫も臆病になっている。
帰国した当初、女王が歩み寄っても白雪姫は拒絶した。その後はずっと膠着状態が続いている。
だが、もう会えないかもしれないと諦めていた娘がまた戻ってきたのは嬉しいことだった。
叶うなら、このまま変態王子の元には帰らずにいてほしい。小国との政略結婚を解消しても、こちらは痛くともなんともない。
せっかく王子の不貞の可能性が出てきたのだ。なんとしても過失の証拠を手に入れ、バード王国の国王や教会を黙らせなければならない。
でなければ、きな臭いことが起こらないとも限らない。
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