幸せの選択

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彼との出逢いは、お茶の水、聖橋のすぐ近くにあるレモンという名の画材店だった。 ある土曜日の午後、それほど混んではいない店内で、画集を眺めていた私に声をかけてきた。 「聖橋って、いいよね」 驚いて顔を上げると、 「その絵が好きなんですか?」 私が見入っていた聖橋の画を覗き込んで、そう言った。 「聖橋が好きなんですよ。なんだか行き詰まっているようなときに、橋の上からボーッと川を眺めていると、気分転換できるのでね」 聖橋をスケッチするときにはどの位置からがいいとか、スケッチするときに使う椅子はどんなのがいいとか、そんななんでもない会話をしただけだったが、爽やかな笑顔に惹かれて、また会えたらいいなと思った。
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