幸せの選択

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私は一人になった。 川面を見つめていた。 左手薬指から指輪を抜き取って、 神田川へ落とした。 水に沈む前に一瞬キラリと光ったが、すぐに見えなくなった。 欄干にもたれていた身体をノロリと起こし、タクシーを拾って病院に戻った。 「どこに行ってたんですか!」 突然いなくなった私を探して、病院では大騒ぎだったらしい。 「でも、とにかく無事でよかった」 と深くは追求されなかった。 一昨年、私は母と同じ病を発症してしまったのだ。 まだ重症化しているわけではないが、すでに重症の母と私の両方を看病してくれている父のレスパイトのため、ショートステイとして入院させて貰っている。
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