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「ひ……っ」
私は咄嗟に一つの言葉を繰り返す。狂ったように、呪文のように、言い慣れたその言葉を。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「どうして僕のことを消そうとしたの? こんなに綾のことを愛してるのに」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「僕ほど綾のことを愛せる人はいないよ? 君も僕のこと愛してたでしょ?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「謝ってるだけじゃわかんないよ。理由を言って?」
「ごめ……」
ヒヤリと冷たい手が、私の顔を優しく包み込む。
「ひぃ……っ」
「言ってごらん? 僕を殺した理由を」
彼は天使のような微笑みを浮かべ、私を見つめている。悪意の感じられないその笑顔が、恐怖を更に搔き立てた。
「わ、私……」
言ったところで、この悪魔にわかるわけがない。他人の気持ちが。私の気持ちが。
そもそも、なぜ自分が消されかけたのかを理解できていない時点で、この人に何を伝えたって通じない気がする。だけど。
「だ、だって……あなたが先に、私のことを消そうとしたんじゃない……! だから私は、自分を守るために……」
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