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 翌日、雛菜と未菜が慌てて俺の部屋にやってきた。 「陽平お兄ちゃん、美理お姉ちゃんがいないの」 「いないの」 「外へ行ったのか」 「外は真美お姉ちゃんが行ってる、はず」 「部屋のどこかにいるかもしれない」 「手分けして探そう」  部屋を回ると真美に会う。 「真美。美理がいなくなった」 「うん。私も気づいた」 「美理は……」 「探したんだけど、いなくて」 「じゃあ美理は……?」 「……分からない」 「分からないですむかよ、大事な家族なのに」 「……そうだ、よね」 「まだ近くにいるかもしれない。俺は探すぞ」 「うん……」  その日、寮の中で美理を見つけることはできなかった。  夜になって、俺の部屋に雛菜がやってきた。 「陽平お兄ちゃん」 「どうした?」 「美理お姉ちゃんはどこいったのかな……」 「うーん」 「私も殺される?」  殺される?  どういうことなんだ。   「雛菜は何か知っているのか」 「今日ね、外に行ってきた」 「だめじゃないか、一人で外に行っちゃ」 「行くつもりは、なかったんだけど」  雛菜は言葉に詰まった。  少しの沈黙のあと、雛菜はまた口を開く。 「陽平お兄ちゃん。私も、出ていく」 「え?」 「怖いけど、この寮を出ていく」  悲しみの表情を浮かべながらも、雛菜ははっきりとそう言った。 「怖いなら出ていくな。俺は雛菜まで失いたくない」 「陽平お兄ちゃん、さよなら」 「未菜!」  こだましている声がある。 『みんなで一丸となって力を合わせるの』  走り行く雛菜の背中をすぐに追いかけたけど、雛菜も美理と同様に寮からいなくなってしまった。
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