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③
紅華は、自宅から最寄りの駅で下車した。
夕方で、行きかう人は多い。紅華はこの風景が好きだった。ワクワクするのだ。
ここには、いろいろな人がいる。
スタスタと、家路を急ぐ人間には興味はない。
紅華が興味を持つのは、群れの統率から外れた動きをする人間だ。それは、酔っ払いであったり、痴漢であったりと、明らかに不規則な動きをする者たち。紅華には、そう言った人間を見分ける嗅覚のようなものが備わっていた。
そして、紅華も人の流れとは異質な行動をする。
酔っ払いが、しゃがんで嘔吐をしているのを見つけた時には、背中を蹴って吐瀉物に倒れ込ました。
痴漢らしき男に近づき、腕を持ち高々と差し上げ、被害者を装い大声で『きゃー痴漢でーす』と叫んだこともある。
更には、ビルの屋上から、ウイスキー瓶を、人の行きかう歩道に落としたりと、一歩間違えば、死人がでたかもしれない悪戯とも呼べない犯罪行為を、楽しんだ。
いずれも、すぐにその場を離れ姿を消すので、紅華は、事件がその後どうなったかも知らないし、警察に捕まったこともない。あまりに大胆な行動に、警察も、一女子高生の仕業とは、思いもよらない。
紅華は、駅前の本屋に寄った。
手に取ったのは、『催眠術をかける方法』『スピリチュアル入門』『オラクルカード・天界占い』の3冊の本。オラクルカードとは『オラクル(oracle)=神託』をカードを見て受け取る占いグッズだ。タロットカードもあったが、紅華はあえてこちらのカードを選んだ。
ふと、目の前の棚を見ると『あなたの隣にサイコパスがいる』という本。何となく惹かれて本をとった。パラパラとめくり立ち読みをする。
これって……、私のことを書いている? 紅華は、もう一度1ページ目から読む。この本の中に書かれていることは、赤芝紅華という存在そのものだ。
「そうか、私、サイコパスだったんだ。それなりに、もっともっと楽しんでいいのね」
だんだん、ウキウキと高揚して来る紅華。そしてついには、
「きゃはははははは」
笑い声が出た。周りの人が怪訝そうに紅華を見ている。
「あ、ごめんあそばせ」
この本も買って帰る紅華だった。
その夜、赤芝紅華は、『催眠術をかける方法』『スピリチュアル入門』『オラクルカード・天界占い』そして、『あなたの隣にサイコパスがいる』の4冊を読破した。
「紗良ちゃん。もう悲しまないで。あなたを素晴らしい所に連れて行ってあげる。きゃははははは」
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