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④
翌日、紅華は意気揚々と教室に向かった。紗良と万里子が談笑しているのが見えた。
「おはよう。紗良ちゃん、万里ちゃん」
「アッキーおはよう」
「おはよう、アッキー。昨日はごめんね、とことん落ち込んじゃってたから……」
紗良が、紅華の腕をとる。
「私より、紗良ちゃんこそ大丈夫? 落ち着きましたか」
紗良の掌に自分の掌を乗せる紅華。
「うん。何とかね。落ち込んでる暇なんてないよね」
ほほ笑む紗良を見て、紅華が目を細めて話題を変える。
「それより、私、占いを勉強してるの。紗良ちゃんのこれからを占わせてもらっていいですか?」
「え、私のこれから……。進路のことも分かるの?」
「分かります。何でも分かる占いです」
「すごいじゃん。紗良ちゃん占ってもらいなよ。でも、それって変な結果はでないよね?」
「もちろんですわ。常に前向きな答えが得られる占いです。それに……」
「それに何?」
「お望みなら……心休まる方法もお教えします」
「いやあ、いいじゃん。今ここではできないの?」
万里子は、自分を占ってもらいたい。
「カードの準備やら、雰囲気作りなど、しなければならばいので、今ここではできません。明日は、土曜日でお休みだから、紗良さんの家にお伺いしてもいいですか?」
穏やかだが、圧力のある紅華の言葉だ。
「うん。いいよ。じゃあ、明日、午後3時頃でいいかな?」
何となく不安感を感じつつも、嫌と言えない紗良だった。
「いいですわ。明日午後3時、紗良ちゃんのお家で」
「ああ、いいなあ、今度私も占ってよね」
万里子は、無邪気だ。
「いいですよ。今度、また占わせてもらいますわ」
紗良は、一瞬紅華が薄笑いを浮かべたように見えた。
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