1/1
前へ
/9ページ
次へ

 翌日、午後3時ちょうどに星野(ほしの)家のドアチャイムが鳴った。一般的な洋風住宅のドアが開く。  紅華(べにか)は、緑色に白い袖のスタジアムジャンパーにショートパンツ、黒のタイツにスニーカーを履いていた。紗良(さら)は、紅華に対してというイメージを持っていた。それゆえ、カジュアル姿な紅華に親近感を覚える。紗良は、自宅ではいつもスウェット姿だった。 「どうぞ、あがって」 「失礼します」  脱いだスニーカーを手でそろえる紅華。廊下を紗良の後をついて行く。リビングでは、紗良の家族がくつろいでいた。会釈をする紅華。紗良は、紅華を紹介する。 「お初にお目にかかります。紗良さんとは同じクラスで、お世話になっております」 「まあ、礼儀正しい方。こちらこそ紗良をよろしくお願いますね」  紗良は、家族を紹介した。 「お母さんとお父さん、それから弟の翔人(しょうと)」 「ご家族皆さん、居らっしゃるのね。お休みの所お邪魔いたします」 「遠慮しないでゆっくりして行ってください」  紗良の父が手を上げて目を細めた。 「アッキー、私の部屋は、二階だから」  階段を上がりすぐ右側が紗良の部屋だった。 「優しそうなご家族ね」 「うん。優しすぎかも。アッキーの家族は? そういえばあまり家族の事はしゃべらないよね。あ、聞いちゃいけなかったかな」 「別に、いいですわ。私の家族は父だけ。イリュージョニストでね。アメリカで仕事をしているの。私は、一人暮らし。自由でいいわよ」 「そうなんだ……」 「それより、占いをしましょう。途中で、中断したら効果がなくなるから、ご家族には部屋に入らないように言ってもらえる?」 「うん。わかった」  紗良が、部屋から出て行く。紅華は、素早く紗良の部屋を調べ始めた。  人一人隠れることができる場所を探す。クローゼットを開けたり、ベッドの下をのぞき込んだり、窓の外を見たりした。  一通(ひととお)り調べると、バックからオラクルカードやアロマポットを取りだして占いの用意をした。 「アッキー、おまたせ」  紗良が、紅茶とケーキを持って来た。 「途中で邪魔をしないように言ってきたよ。先におやつを食べちゃおう」 「わあ、ありがとう。私、甘いもの大好きなの」  顔をほころばせる紅華。少し目尻の下がった顔は、癒しを感じさせる。 「ホントに、好きなのね」  紅華の笑みに、リラックスする紗良だった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加