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⑤
翌日、午後3時ちょうどに星野家のドアチャイムが鳴った。一般的な洋風住宅のドアが開く。
紅華は、緑色に白い袖のスタジアムジャンパーにショートパンツ、黒のタイツにスニーカーを履いていた。紗良は、紅華に対して優雅なというイメージを持っていた。それゆえ、カジュアル姿な紅華に親近感を覚える。紗良は、自宅ではいつもスウェット姿だった。
「どうぞ、あがって」
「失礼します」
脱いだスニーカーを手でそろえる紅華。廊下を紗良の後をついて行く。リビングでは、紗良の家族がくつろいでいた。会釈をする紅華。紗良は、紅華を紹介する。
「お初にお目にかかります。紗良さんとは同じクラスで、お世話になっております」
「まあ、礼儀正しい方。こちらこそ紗良をよろしくお願いますね」
紗良は、家族を紹介した。
「お母さんとお父さん、それから弟の翔人」
「ご家族皆さん、居らっしゃるのね。お休みの所お邪魔いたします」
「遠慮しないでゆっくりして行ってください」
紗良の父が手を上げて目を細めた。
「アッキー、私の部屋は、二階だから」
階段を上がりすぐ右側が紗良の部屋だった。
「優しそうなご家族ね」
「うん。優しすぎかも。アッキーの家族は? そういえばあまり家族の事はしゃべらないよね。あ、聞いちゃいけなかったかな」
「別に、いいですわ。私の家族は父だけ。イリュージョニストでね。アメリカで仕事をしているの。私は、一人暮らし。自由でいいわよ」
「そうなんだ……」
「それより、占いをしましょう。途中で、中断したら効果がなくなるから、ご家族には部屋に入らないように言ってもらえる?」
「うん。わかった」
紗良が、部屋から出て行く。紅華は、素早く紗良の部屋を調べ始めた。
人一人隠れることができる場所を探す。クローゼットを開けたり、ベッドの下をのぞき込んだり、窓の外を見たりした。
一通り調べると、バックからオラクルカードやアロマポットを取りだして占いの用意をした。
「アッキー、おまたせ」
紗良が、紅茶とケーキを持って来た。
「途中で邪魔をしないように言ってきたよ。先におやつを食べちゃおう」
「わあ、ありがとう。私、甘いもの大好きなの」
顔をほころばせる紅華。少し目尻の下がった顔は、癒しを感じさせる。
「ホントに、好きなのね」
紅華の笑みに、リラックスする紗良だった。
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