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⑦
言われた通りに裏返す紗良。
そこには、一人の白い服を着た少女が、青空のもと花畑で座っている絵だった。少女は目をつむってかすかにほほ笑んでいる。
ただ、その絵柄は、紗良から見ると逆位置だった。天が下で地が上になっている。
「これは、『花畑の天界の少女』というカード。このカードの意味するところは、『心の安定、幸せな気持ち』です。その逆位置なので、『不安定、不幸せ』という意味があるの。紗良ちゃんは、今、不安定な状態ね。それを不幸せと考えている」
うなずく紗良。
「不安定なのは何故? 成績のことじゃない? 先行き不透明な進路のことも不安に感じている」
「そう」
また、素直にうなずく紗良。紅華と紗良は、同じクラスだ。しかも成績の事で注意されたのは、お互いが知っていること。言い当てたと言っても、何の不思議もない。
カードをゆっくりと回し、紗良から見て正位置にする紅華。
「この女の子、お花畑の中で幸せそうな顔をしているよね。紗良ちゃんの望みは、心の安定でしょ。成績の問題をクリヤーしたい。そうすれば幸せな気持ちになれる」
「そうよ。今とっても苦しいの。どうすればいいの? この占いではそれがわかるの?」
「もちろんですわ。カードから読み取ったメッセージをまとめるね。今の問題は、紗良ちゃんの心が不安定で辛いこと。望みは、楽になりたい、心の平安を得たい。じゃあどうすればいいのか。このカードの少女の顔を見て」
「目をつむっているよね……。幸せそうな顔だ」
「そう。それが答えなの。目をつむる。そうすれば、天界の花畑に行くことができる。何のわずらわしさもない、天界の平安を感じることができるの」
「でも、それって、現実逃避じゃない?」
「そうね。でもね、現実逃避をして心の平安に浸ることができれば、辛い現実に一歩を踏み出す力も湧いてくる。辛くなったらまた、天界の花畑で平安を感じて心を癒して、現実に戻って前に進む」
「そっか、天界で疲れを癒して、現実界でがんばるみたいな感じね」
「そうそう。そういう感じ。それでね、その天界に行く方法を教えますね」
「え、目をつむるだけじゃだめなの」
「うふふ。目をつむるだけで天界に行けるなら、みんな行っちゃいますよ。古くから伝わる天界へ行く秘術を教えるね。ちょうどベッドもあるから、そこに横になってしましょう。簡単な瞑想みたいなものだから心配しないでね」
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