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「ねぇ、この消しゴム変なの」
友子が泣きながらわたしの机に、白い四角い消しゴムを置いた。カバーがついているわけでもない、裸の真っ白な消しゴム。
「太郎くんの名前を書いていて、見つかっちゃいそうだったから慌てて消したら、太郎くんが消えちゃったの。そのあと、まさかと思って…」
友子は数人の名前をあげたが、そういえば最近その人たちを見ていない。
「どこで買ったの?それ」
「わからない。ある日机に置いてあって…」
そのとき、友子を呼ぶ声がして、友子は消しゴムを置いたまま、教室を出て行ってしまった。
わたしは、マジマジと消しゴムを見つめる。手に取り、感触を確かめる。それからノートを取り出して友子の名前を書いた。そして消した。
友子は、今どこにいるのだろう。
わたしね、この消しゴムが欲しいと思ったの。
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