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だが、二人の間によからぬ関係がある疑いはかなり濃い。
それを証明する何か。
私は一生懸命考えた末、一線を越えることに決めた。
そう、雄介のスマホを、彼が寝ている時にこっそりのぞいてみることにしたのだ。
で、結果は黒。彼の画像フォルダの中に残っていたのだ。
文香と雄介の熱烈な行為を赤裸々につづった文章が。正確には私のパソコンの画面に表示された、その淫らな表現の数々をスマホで撮影したものを見つけてしまったのだ。
書いているフォームは間違いなく投稿サイトのもので、それを表示しているのも私のパソコンに間違いなかった。
文香も文章が下手な方ではない。そこそこ読める文章で書かれた赤裸々な行為。しかも、出てくる名前が親友と彼氏と言う事で、はっきり言って吐き気がした。その吐き気に耐えながら、私はその画像を自分のスマホで撮影した。
そして、自叙伝と雄介を前に私はその画像を見せて二人を問い詰めた。
「さあ、説明してもらいましょうか? この文章は何?」
「それは……」
口ごもる雄介。
「言っとくけど、この文章は雄介には書けないわ。もちろん私だって書いてない。そして、あなたの自叙伝は何処にも公開されていない。この意味、分かるわね?」
そう、この文章を書くことができるのは、自叙伝たる文香ただ一人……便宜上そう呼ぶことにするが、つまりはそう言う事なのだ。
「ごめんなさい。その、熱心に読んでくれるのが嬉しくて……」
「最初は興味本位だったんだ。けど、気が付いたら……。凄く素敵な文章だった」
「素敵な文章なら、それでエロ表現をしても良いと?」
「いや、そう言う事じゃ……」
口ごもる雄介に助け船を出したのは、もちろん文香だ。
「彼は悪くないのよ。私が、私が勝手に書いたの。私の気持ちを伝えたくて……。ごめんなさい雄介君」
「いや、良いんだ。俺も嬉しかったし……」
はあ?
「ふ・ざ・け・ん・なぁぁぁぁぁ」
いちゃつく二人を見て、私の怒りに火が付いた。
マウスを握り、投稿サイトの作品を編集するをクリック。そのまま下にスライドをさせ、出てきた削除の文字を思い切りクリックした。
「お、おい。何を!?」
止めようとする雄介を思い切り押しのけ、私は迷いなく削除を実行した。
本文が表示されていないので、断末魔の候すらなく私の親友はこの世から消えた。
いや、私が消した。
自分語りに徹していればいいものを、自叙伝の分際で人の彼氏に手を出そうなんて百年早いのだ。
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