親友の自叙伝

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 一応親友だし、と思って毎日更新されている彼女の自叙伝を読んでいる。  読んでいる限りでは、どっちかと言うと日記に近い感じで、彼女は自叙伝をはき違えているとしか思えない。 「自叙伝ってこれで良いの?」 「自叙伝に正解なんてないのよ」  それはそうかもしれないが。  読む側の苦労も考えろってんだ。 「雄介君はもう少し優しく読んでくれたなぁ」 「は? 雄介これ読んでるの?」  興味なさそうにしてたくせに。 「うん、たまに……」  おいおい、なんだその間は。 「え、文香まさか?」 「……違うわよ。そんなわけないでしょ」 「言っとくけど、雄介に手を出したら許さないからね」 「手は、もう出しようがないのよ」 「そう言う話ではなくて」  分かってるってば、と少し大きめのフォントで書いてきた。  そのやり方で強調を表す手法も、自叙伝にはそぐわないのではあるまいか。  その日の夜、私はひそかにパスワードを変更した。 
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