もう既読はつかないんだね

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 髙橋くんから、図らずも彼女の住んでいる地名を聞いてからは、押さえ込んでいた気持ちがあふれ出てくるようだった。 どんな暮らし向きなのかを見てみたいと思った。 見たいだけだ。 会いたいわけじゃない。 そんな言い訳を自分自身に言っていたのだ。 仕事関係で豊原町方面に行った時、僕の足は自然と住宅街に向かっていた。 今の名字は"大平"だと髙橋くんが言っていた。 いろとりどり、きれいな家並みが続いていた。 しばらく表札を見ながら歩いていると、あった。 薄い山吹色の二階建てで、そんなに広くはないが庭には芝生が広がっていて、その周りには、ぐるっと、白い小さな花が植えられていた。 いかにも彼女らしい明るい庭だと思った。
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