そう、あれは不幸な事故だった

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『5時のニュースをお伝えします。今日午後2時ごろ、〇〇区のマンションで乳児が窒息死するという事件が起きました。事件当時、部屋には母親と幼稚園に通う乳児の姉がいましたが、生乾きの洗濯物が乳児の上に落ちたことで窒息したと見られています—』

『9時のニュースをお伝えします。〇〇区のマンションで乳児が窒息した件、母親が転寝をしている間に雨が降り出し、疲れた母親を起こさないようにと乳児の姉が洗濯物を取り込んだ際に数枚を落としてしまっていたことが原因となったことが明らかになりました。目覚めた母親が異常に気づき、119番通報したとのことです。
　警察は、事件性は無いとのコメントを出しています』

「…たいへん痛ましい事故ですね」
「はい、父親が単身赴任中とのことで、お母さんは、ほぼワンオペ状態だったようですね。お姉ちゃんは、赤ちゃんのお世話で疲れて眠ってしまったお母さんを気遣って、お手伝いをしようとしたんでしょうね」
「優しい心でしたお手伝いが、結果的に不幸な事故につながってしまった、と」
「そうですね。誰が悪いわけでもない。やりきれない思いがします」

コメンテーターがスタジオで語り合い、同様の事故が年間どれだけ起きているかを示すデータを紹介する。

「これらの事故の多くは、ちょっとした注意でかなり回避することができそうですね」
「はい、今回の事故は急な雨などの偶然が重なってのもので、まさに不運としか言いようがありませんが、同様の窒息事故は、幼い子どもにバイタルアラームを付けるだけでも、発生確率を下げることができるのではと思います」

　重々しい空気のまま、スタジオの2人はこのニュースを締めくくった。