妻の独白

1/1

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ

妻の独白

 妊娠がわかって、医者から予定日を聞かされたとき、私の心臓は跳ね上がった。この子は誰の子? 夫の子? それとも…?  それは恐ろしい考えだった。もしも彼の子だったら、私は私生活でも仕事でも、居場所を失うことになるだろう。  結論から言うと、胎内にいるこの子は、夫との間に授かったのではなかった。  私は頭を抱えた。どうすればいい?  そして私は、計画を立てた。事故を起こせば、ううん、起こさせればいい—。  計画は、こんな感じ。 <実行前日以前> ・娘のお手伝いを、これでもかとばかりに過剰なほどに褒める ・娘に、赤ちゃんへの嫌悪感を植え付ける ・赤ちゃんの兄弟が欲しいか確認して、否の答えを得る ・娘がスマホで検索できるよう、必要なヒントを与えておく <当日> ・雨が降りそうな午後、ベビーベッドにミルクを零しておく ・洗濯物を娘の手の届く高さに外干しして、幼稚園に娘を迎えに行く ・帰宅したら、赤ちゃんを床に寝かせて、転寝をする  …娘は、実によい働きをしてくれた。誰もが、例のできごとを、不幸な偶然の重なった事故と疑わない。  これでまた、私たち家族は安泰になった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加