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購買のパン屋の前には人だかりができていた。その一番後ろで理佐ちゃんは何度も背伸びをする。
「ああ、買えるかなー。あのサクふわなメロンパン」
「買えるよ、きっと」
私が行列の先を見つめていると、理佐ちゃんは弱々しく話す。
「だって、競争率高いんだよ?」
「大丈夫だよ。もうすぐ人がいなくなるから」
「え、嘘だぁ。これはまだまだいなくならないよ。買う人で溢れてるもん」
ふふふと笑う理佐ちゃん。すると、その声に反応して隣にいた後藤くんはこっちを向いた。
「理佐!」
「あ、後藤くん!」
「今からご飯?」
「うん」
「ちょうど良かった。パンたくさん買ったから一緒に食べない? その……俺と二人で」
「えっ、うん!」
返事をしてから、私を見て申し訳なそうな顔をする。私は後藤くんを指差す。
「行っておいで、彼氏のところへ」
理佐ちゃんはぱああっと顔を明るくした。
「ありがとう、あずみちゃん」
理佐ちゃんは後藤くんと近くの休憩スペースに移動するために歩き出す。
私はふうっとため息をつき、口を開いた。
「そういうことになったから、良ければ一緒に食べない? 昭野さん」
私の隣にいた昭野さんは、少しだけ顔をあげて私を見る。話しかけられるとは思ってなかったらしく目を丸めていた。でも私にこくんと頷いた。
ガーゼで隠してあるけど、昭野さんは左頬に、火傷の跡がある。
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