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お腹が空いた。
そう思いながら、男はポケットへと手を突っ込んだ。
じゃらっと取り出した手のひらの小銭を数える。
100円玉が1枚と、10円玉が2枚、1円玉が5枚…
最早、ため息も出ない。
男は真顔で増えることのない小銭を眺め続けた。
魔が差した───
そう、一言で言えば、“魔が差した”のだ。
これまでの、そして現在の自分の人生に。
その不幸の数々に…。
空腹が、余計にその虚無感を煽った。
男は立ち上がると、準備をして家を出た。
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