サラはひそかに咲き誇る。

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 ***  そう、誰にも渡さない。  最高の桜は、最高のお花見は、あたしだけのものなのだ。だから。 「るんるー、るんるんるー」  あたしは金曜日。  いつもよりずっと早く家を出て、こっそりA公園に寄り道をした。そして、一番お気に入りの桜の前――お花見スポットのあたりの地面に、例のスプレーを撒いたのである。  吸っても問題ない。あたしには何の害もない。だって、桜があたしを選んでくれたのだから、あたしだけは大丈夫なのだ。 「さあて」  あたしはにんまり笑って、そのまま学校に向かったのだった。 「これで、あそこは、あたしだけの場所」  放課後。  お花見をするべく、あたしと一緒に公園に向かった文芸クラブのメンバー。カナコ先生が、茫然と呟いたのだった。 「え、え?何これ……」  あたしは彼女を無視して、“場所取り”していたお気に入りの桜の前に向かう。一歩歩くたびにぐしゅ、ぐちゅ、と濡れた音がしたけれど気にしなかった。  平日だからって、油断しなくて本当に良かったと思う。この桜に近づいた人は思ったよりも多かったようだ。――人型の血の染みと、溶け残った肉片があちこちに落ちている。 「ここ、あたしの席なんで、誰も取らないでね!」  あたしは血まみれの地面に一人分のシートを敷いて笑ったのだった。 「こっち来ると、あたし以外はみんな溶けちゃうから!」
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