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2・記憶の扉
俺が、秀哉の事を守ろうとして自ら藤の花の猛毒を食らってから一週間たった。
でも、違和感だけが未だに取れない。
何故ならば、倒れた際の記憶がないくせに、母親が言った言葉は覚えているからだ。
俺は、何かしらの能力だと感じた。
自分に対して、違和感を持ち始めてから図書館の雰囲気が漂う本棚に行くようになった。
俺が、毎回本棚に行くのは夜中だがさほど、兄弟・姉妹が寝ている寝室からは遠くないから通い続けているだけだが、、、親に見つかったら幸い大惨事になるため、親の目を盗んで本棚の方へこっそり向かっている。
もちろん、その事は俺だけの秘密にしている。
そして、満月のつきが輝いている薄暗い夜になった。
俺は、布団からこっそり体を起こした。
夜中、一人で本棚に立って「猛毒花図鑑壱」や「猛毒花図鑑弐」などを手に取った。
本棚から取った本は、今日中に読み終わらなければならない。
だから、俺が身体に得た能力を探るべく、彼岸場と同じ猛毒を持つ花を隅々まで調べ、ノートに書き写した。
俺が、黙々と作業を続けていると声が聞こえてきた。
「子供達は、寝室でぐっすり寝ているから安心しなさい。お茶にしましょう。疲れたでしょ?」
母親の声がした。
声が聞こえた瞬間、俺の背筋が凍りついた。
「早くしねぇと、、、見つかる!!」心の中では焦りを感じたが、表情には焦りを出さずに本をしまい込み、本棚を後にした。
一歩一歩慎重に歩いて行き、母親にばれない道を突き進んでいった。
その時だ、「ドクン、、、!」心臓の音がやけにうるさかった。
一瞬強い振動と、音が俺の体の中で強く感じて体温が上がっているのが分かった。
「これは、、、ただもんじゃない、、、!!」
俺の体からは、冷や汗がダラダラ垂れている。
心臓の音は更に激しくなるばかりで、自分では抑えきれないほどの体の震えと暑い体温だった。
「落ち、、、落ち着け、、、!!な、、、何も、、、心配はない、、、!!」
表情には、出ていないけど体の震えと心臓の激しい心拍数で落ち着いていないのが分かる。
怯えながら、寝室に戻っている時だった。
「サラ、、、。」
何かが、通り過ぎたような感覚がした時には、もう、、、遅かった。
「あら、連。そこで何しているの?まさか、、、悪いことはしていないでしょうね?」
母親に、話しかけられた時は一瞬冷や汗を垂らしたが平常心を取り戻すことができた。
「何でもない。トイレに行ってただけなのにそんなに疑うの?俺が、悪いことでもすると思う?逃げ出すわけじゃないのに。」
母親の質問に対応するのに、必死なのもあるが今にも心臓が飛び出そうだから、必死に堪えていた。
「そう、、、ならいいわ。早く寝室に行きなさい。おやすみ。」
ホッとした。母親にバレずに本棚に行って調べ物をしてたことがバレなかったのが一番だ。
「うん。おやすみなさい。」
そうして、俺は寝室で眠りについた。
翌朝、記録したノートを見ながら花辞書を開いた。
彼岸花と同じ様な猛毒を持つ花はあるが、、、彼岸花に比べてみればそんなに大した事のない毒の量だった。
でも、唯一分かることは「青い彼岸花」と「赤い彼岸花」が一番の猛毒らしい。
その時だった。
「彼岸花のインク、、、。やけにマゼンタ色が目立つなぁ。」
記憶がまた、ふと浮かび上がった。
「そう言う事か!!」
俺は、謎が解けた事に喜びを覚えた。
「お兄ちゃん、、、どうしたの?」
俺の横で、遊んでいた秀哉が話しかけてきた。
少し、恥ずかしくなった。
「何でもないぞ、秀哉。少し考えていた事が分かったんだ。」
「そうなんだ!良かったねお兄ちゃん!!」
秀哉も一緒に喜んでくれたのが、なんだか可愛く思えた。
なんだかんだ、色々あったが考え事がまず、真実が見えてよかった。
その夜、俺は母親に呼ばれた。
「何?どうかした?」
俺は、母親が口にする発言をしばし予想をした。
「連。あなた、花に興味があるのかしら?花に興味があるのなら見 せたいものがあるから見に来たければ一緒にどうかしら?」
「え、、、?見せたいもの?」
「そうよ?見に来ないの?」
「見に行くに決まってるでしょ。」
そうして、俺は母親が案内する場所に向かっていった。
その場所は、製作所だった。
「製作所、、、?」
「そうよ。ここはただの製作所じゃないのよ。」
「ただの製作所じゃない?」
「まぁ、、、見てみなさい。」
母親にそう言われた通りにした。
製作所の中を除いてみると、、、そこは一面彼岸花に追われていた。
「彼岸花、、、青と赤色。」
「あら、彼岸花って分かった?ここの製作所では青い彼岸花と赤い彼岸花を育てているのよ。」
「育て終えたら、どうなるの?」
「育て終えたら?何に使われるかしらねぇ?私も、あまり分からな いのよ。私は彼岸花を育てる専門だから。」
「そうなんだ、、、。」
彼岸花を育てているのは、分かった。
青と赤があるなら、マゼンタ色になってインクとして使われる。
「ちなみに、青と赤を混ぜると何色になるか知っているかしら?」
「マゼンタ色になるんだよね?」
「正解。じゃあ、そのマゼンタという色は具体的にどんな色か分かるかしら?」
「マゼンタ色は具体的に、赤紫色だよ。」
「正解。よく分かってるわね。それだけ、花について調べているから分かるのかも知れないわね。」
「そうだね。」
そうして、俺はこれからも彼岸花の事について記憶を頼りに探していく道のりの長い旅が始まった。
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