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若大将は厄介者
それは間もなく『坊主も走る』といった賑やかな師走を迎えようかという、ある晩秋のころだった。
6歳になる聡は七つ年上の内気な兄とは似ても似つかない何事にも積極的な少年だった。
積極的と言えば聞こえはいいが、聡を知る人たちからは関わることすら敬遠されるほどの『物を壊す天才少年』と知られていた。
「聡、お前はホントお父さんの仕事場が好きなんだな。なんなら将来は儂の跡継ぎにしてやってもいいぞ! どうだ⁉」
「イヤ!」
「どうしてだ? 電気が好きなんだろ⁉」
「ん・・好きだよ!」
「なりゃ若大将だ! これできまりだ!」
「イヤ!」
日曜日で従業員も居ない一階の工場に来ては今日も何かしらをいじっている6歳の聡。その傍には聡の仕草に目を細めて眺めている父親が居た。
今もバッテリーチャージ用の赤い柄のクリップを小さな両方の掌を使って一本の釘のようなものを掴もうとしている。
「無理だよ! 聡のようなそんな小さな手じゃ、そのクリップは握れないよ、それよりその長い釘みたいなの、どうしたんだ?」
「拾ったんだ!」
拾ったと言った聡だが、どうやらその釘らしきものをプラスとマイナスのクリップを使ってショートさせようと執拗に手を動かしている。
以前にも同じような工程で聡が工場内を停電にさせたことがあった。
現在のようなノーヒューズブレーカーなんてものが無い時代だから大騒動である。
「そうだ聡、今日は工場も休みだし今からデパートのおもちゃ売り場に行かないか?」
「えっ今から?どうして急に・・なにか買ってくれるの?」
「ん・・何でもって訳にはいかないが・・そんなんじゃつまんないかな?」
「そりゃ行きたいけど・・なんだか急に言うんだもん、気味悪い⁉」
親父さん、このままだと再び工場が聡の餌食にされると思ったのだろか? どうやら聡の好奇心をはぐらかすかの作戦を思いついたのである。
そしてそれはまんまと的中した。
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