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嘘つき
「ねぇ、おもちゃ買ってくれるってこれの事?」
「これは場所が取り過ぎるし今の聡の部屋じゃ置けないよ」
「なぁんだ、買ってくれるって言ったからついて来たのに、嘘つき!」
困った親父さん、ふと来月迎える聡の誕生日を思い出した。
「ん~!聡って来月の十日が誕生日だろ、だからその時なら買って上げる、そうだ!それまで部屋を片付けなくっちゃな!」
「イヤ! またそんなこと言って・・どうせ子供だからそのうち忘れるだろうって魂胆(こんたん)に違いない」
「そんな、可愛げの無いこと言うもんじゃないよ、ひと月待つだけじゃないか、
聡はいつも思い立ったら人の話を聞かないところがある、少しは待つことも勉強しなきゃ! そうだろ⁉」
屁理屈はりっぱでもやはり子供だよね、遂に聡は壁の方に身体を背けたかと思うと拗ねてしまった。
口はへの字で時折振り返り父親をチラ見する、その目には今にも溢れそうなものが見える。
そんな我が子が不憫に思えたのだろうか、親父も聡に負けないほどのせっかちで我慢ができない性格だった。
「聡、そんな顔するなよ・・お父さんも悲しくなるじゃないか。そうだ、あそこの少し小さなミニチュア見えるだろ。あれなら、場所も取らないし今日にでも買ってやるぞ、どうだ⁉」
聡は親父さんの指さす方に歩き始めた、だが少し手前で(こんなおもちゃみたいなの・・)とミニチュアへの代替えを早くも却下、そして出てきた言葉が・・
「あんな小さいのなら要らない!」と
困ったことに親の弱味を見抜いていたのか、常軌を逸した聡はついにしゃがみこんでしまった。
少しは乾いた先ほどの涙、だが赤く腫れあがった頬には再び涙が伝い始める。
だが次に発せられた親父さんの言葉は聡にとっては予想外なものだった。
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