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子供のころの記憶
あれは確か私が六つの頃だったかな・・
親父に連れられてデパートのおもちゃ売り場に行った。
それはそれは驚いた。
「えっ!なにこれ!」
ただでさえ広いおもちゃ売り場だというのに、そのほぼ中央では黒山の人だかりが出来ていた。
「聡・・こっちだ!」
親父さんは私の手を弾いてその人だかりに割って入る。
「こっちっだ、こっち、そら聡、お父さんの前に来てごらん⁉」
親父さんの前に立ちすくむその姿はまるでカンガルー親子のようだ。
「あっ鉄道模型だ、凄い!」
当時の私は贅沢にも自分専用に12畳あまりの部屋が与えられていた。
親父の工場に材料を納品する業者の叔父さんたちの中には「聡ちゃんに」と言っては、時々おもちゃを振舞ってくれる奇特な人が居た。
中でも気に入っていたのが当時の私がその屋根に乗っても壊れないというブリキで作られた大きなおもちゃの自動車である。
だから六歳の私にとっても決して広くはない12畳だった。
その大きな人だかりの要因たるもの、まさにその私の部屋を彷彿させるほどの大きなステージ上にあった。
ところ狭しとステージ一杯に敷き詰められた現代で言うところのNゲージのレール。
さらにはそのレールの上を自力で走り回る鉄道車両に一瞬にして夢中になってしまった。
トンネルを抜けると次は鉄橋だ、そして・・たしか踏切を通過?・・ん・・それから・・ん・・
後期高齢者の私の記憶はここ迄、これ以上はもう限界だ!
(でもさ・・そんな年でよく覚えている方じゃない?)
なんて煽てててもてもこれ以上は無理!絶対無理!
(私なんて、つい数年前の事だってそんなに鮮明には思い出せないわ)
そうなんだ、これから話す物語はだね、私の人生で初めて悔しい思いをした出来事であり親父とのたった一つの思い出でもあるんだ。
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