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【自創作】弟と、私
「俺は姉さんに会えればいいの!会わせてくれないかな」
「アポイントメントを取ってくれてたら大丈夫だったんだがな、いくら血縁者とはいえ…」
白い白衣に白のワイシャツを着ている青銅色の髪色の彼、Drリムレス。
腕を捲り、上着を羽織ってバッグを肩にかけている茶髪の彼、月影蒼葉。
彼らは少しばかり言い合いをしていた。
「先生〜。って、蒼、葉……?」
その名前を口にした途端にサァッ、と青ざめていく彼女。
「あ、姉さん!」
「なんで、ここに、」
嬉しそうに返す蒼葉に動揺したような声音で尋ねる彼女。
「それ、は……」
「『先生』と姉さんとオハナシに来ただけだよ?」
言いにくそうに口を噤むDrリムレス、何をそんな言いにくそうなのかと言わんばかりに答える蒼葉。
「……って」
「?」
「どうしたんだ…?」
最後の部分しか聞こえなかった彼女の言葉に1人はハテナを浮かべ、1人はどうしたのかと問う。
「帰って、と言ってるの!!!!」
彼女はいつもとは違う声で、怒っているような、心底嫌っているような、普段は出さないような、身内も聞かないような声を出した。
「姉、さん、?……俺はっ、姉さん、姉さん、の、」
「俺は姉さんの弟、そう言うつもりでしょ、?知ってる。何回も、何回も、何回も聞いてきた!!」
半ば叫ぶような声で彼女は言った。そんな声を、普段はなかなか出さないような声を聞いたからかDrリムレスも、蒼葉も驚いたような顔をする。
「でも僕は……ううん、"私"は月影琉華として、生きることをやめた。もう、僕を、私を、この鎖から離してよ……」
珍しく泣きそうな声を出し、普段ニコニコと笑っている彼女からは想像もつかないような弱々しい姿を見せた。
「ニア……」
「赦されるでしょ…?もう、こんなに、貴方達のことで、苦しんで、苦しんで、苦しんで…それでもまだ私は赦されないと言うの……僕はどうやったら、後どのくらい苦しんだら、赦されるの、」
心配するようなDrリムレスの声。彼女の声は誰かに赦してくれと乞うような声だった。彼女は自分の為に強くなって、それを大切な人たちに使うようになった、だが中はただの女の子なのだ。
「…姉さ、」
「帰って。私は、月影琉華じゃない、ニアなんだ」
そう、目の前にいる蒼葉に彼女は静かに告げた。
「……良かったのか」
「何が?」
そう問われ、何事も無かったように返す彼女。
「アイツを帰したことだ」
「いいんだよ、あれで。私はどこまでも"自分勝手"なんだから」
そう自身を『自分勝手』だと言った彼女の本意は誰にも知られることは無いのだろう。
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