第2幕 疑惑

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第2幕 疑惑

チャイムのSE「ピンポンパンポ〜ン」 琢磨「あ、放送だ」 教師Aの声「2年生の日本史補習を受けている生徒、次の課題を渡しますので、職員室まで取りに来てください」 チャイムのSE「ピンポンパンポ〜ン」 琢磨「じゃんけんしようぜ、じゃんけん」 隆一「負けねえぞ!」 大輔「よしきた!」 琢磨がセンターで、上手に大輔、下手に隆一。 3人「せーの! 最初はグー! じゃんけん、ポイ!」 センターの琢磨が1人負けする。 琢磨「あああああー! 負けたぁ〜!!」 大輔「言い出しっぺが負けてやんの」 隆一「ホラ、早く行ってこい!」 琢磨、トボトボと下手にはける。 大輔、隆一、机に戻り、課題を再開。隆一はこの教室に来てようやく初めて教材一式を開く。 大輔「はーー、良いな貴明の奴」 隆一「言うな。合格点獲れない俺達が悪いんだ」 大輔「んな事言ってもよ! 俺らといつも補習受けてた奴が今ここにいないって結構ショックじゃね? アイツだっていつも赤点ばっかだったのに、何で急に合格点なんか獲れんだよ」 隆一「俺に聞くな」 大輔、ため息つく。 隆一「貴明って、中間の時何位だったんだ?」 大輔「学年?」 隆一「ああ」 大輔「え〜と、200人中、199位、だったかな」 隆一「へ〜……じゃあ、ビリ誰」 大輔「……俺」 隆一、椅子から転げ落ちる。 大輔「なんだよぉ!」 隆一「散々アイツのこと馬鹿バカ言っていて、アイツより点数低いじゃんかよ!」 大輔「うるせぇ、馬鹿には違いないじゃないか! それに、たった3点差だ」 隆一「50歩100歩だな」 大輔「アイツ、今回の期末何位だったんだろ。ここにいないってことは、170位前後にはなってておかしくないぞ」 隆一「聞きたい?」 大輔「知ってんの」 隆一「もう今回凄いんだよ、ぐわ〜って上り詰めてさ……」 琢磨「(意気消沈して)ただいま……」 隆一「おかえり…って、それまさか課題!? だよなぁ」 琢磨「コレ全部今日中だってさ」 大輔「多い! 多すぎる!」 琢磨「提出したら帰って良いってさ」 大輔「終わるまでは帰れないってことだよな」 隆一「当然、終わらせてから提出……だよなぁ」 大輔「終わるかぁっ!」 隆一「終わるかぁっ!」 大輔「それ今俺言った! しかもこれ調べ物必要じゃん。面倒だ、おわらねぇ〜っ!!」 隆一「そんな事言ってる暇あったら、課題に取り組め!」 大輔「はい」 一同、机に戻り作業再開。 大輔「なあ隆一」 隆一「なに?」 大輔「今回の期末、貴明の順位って何位に上がったの?」 琢磨「そういやそうだ。ここから脱出できるレベルは何位なのか知りたい」 隆一「聞いて驚け見て笑え! なななななんと、89位だ!」 大輔・琢磨、ズッコケる。 大輔「89位ぃ!?」 琢磨「110位も上がってんじゃん!」 大輔「嘘だ、有り得ない。170位前後って言ったのはどこのどいつだ! あ、俺だ〜!」 隆一「いや〜、俺も驚いたんだよ。一気に順位がぐぐぐーっと上がったからさぁ」 琢磨「怪しめよ、どう考えてもおかしいだろ!」 大輔、センターに立つ。スポットだけが当たり、周りの照明が落ちる。 大輔「え〜、この補習は、テストの点数が低かった生徒が受けるんです。貴明さんは、今回かなり順位を上げた。つまり、あの貴明さんが、今回いきなりテストで点数をとった……」 照明が元に戻る。 琢磨「……カンニング?」 沈黙。 大輔「まっさかな〜〜」 3人「ははははは」 椅子に座ると同時に 琢磨「一体どうやったんだ」 隆一「前のやつの答案を、盗み見たってのはどうだろう?」 琢磨「ああ〜」 大輔「見せてもらったってこと?」 隆一「たまたま見えちまったのかも」 大輔「どっちにしろ、それは無いな」 琢磨「何でそう言い切れる」 大輔「アイツの前に座ってるの、俺だもん」 琢磨・隆一「ああ〜」 大輔「失敬だな君達は」 琢磨「カンペとか用意したのかな」 隆一「だとしたら、よくバレなかったね」 琢磨「消しゴムが使えるんだよな」 隆一「ああ、本体に書いて? テスト終わったら消して証拠隠滅ってパターンか」 琢磨「そんなことはしない。ケースを使うんだ」 大輔「ケースに書き込むの?」 琢磨「ちっちっち。よく考えてみな。ケースにかける文字の数なんて、タカが知れている。俺たちが合格点を取るにはもっと多くの情報が必要だろ?」 大輔「じゃ、どうすんだよ、消しゴムって」 琢磨「ケースに直接書くんじゃない。ケースと本体の間に、カンペを忍ばせるんだ〜!」 大輔・隆一「おお〜、それはみょーあんだー」 大輔「で、その多くの情報量のカンペを、試験中おもむろに開くってわけか」 琢磨「そう!」 隆一「試験中にこーやって(新聞広げるようなしぐさ)開くわけか?」 琢磨「そう!」 隆一「(新聞畳む仕草)新聞読んでるんじゃねえんだぞ」 琢磨「ダメか! じゃあ、前の席の女子にお願いして、背中にカンペを貼っておいてもらうってのは」 大輔「それこそ、教師の見回りで一発でバレるじゃん!」 琢磨「ちっちっち。勿論テスト中は、その女子の長い髪でカンペは隠されている。先生がいなくなった隙に、俺が合図を送ると、髪を掻き分けて、背中のカンペを見せてくれるって寸法よ」 大輔「そんな悪事に協力する女子が、うちのクラスにいるとは思えない」 隆一「それに、ロングヘアーの場合限定だよな」 大輔「大体、アイツの前の席は俺だっつーの。テストの席は生年月日で決まった男女別の出席番号順だから、アイツの前の席は、どっちにしろ男子になるんだよな」 琢磨「ダメかぁっ!」 隆一「貴明が、カンニングした証拠も無いんだから」 大輔「ああ、アイツはカンニングすら失敗する奴だからな」 隆一「そうなの!?」 大輔「小学校の時だ。隣の席のやつにオシリスの天空竜一枚やる代わりに、カンニングさせてって買収したら、後日先生に全部話されちゃったって事があるんだぜ」 隆一「呆れた。オシリスの天空竜は、そう言う事には使用不可だよ」 大輔・琢磨「そこじゃねーよ!!」 隆一「じゃあ、コレに懲りて、もうカンニングなんかしない! って気になったんじゃない?」 琢磨「う〜ん、今度カンニングする時は、人の手は借りない! って思ってたり?」 隆一「最初から勉強すれば良いのに……」 大輔「まったくだよ。俺は点数は低いが、カンニングなんかいっっさいした事ないぞ」 琢磨「そりゃそうだよな。カンニングしといてその点数だったら…ぶふっ。あまりにも可哀想だもんな」 大輔「日本史17点のお前に言われたくねーよ」 琢磨「なんだと。18点で俺に『勝った〜』なんて喜んでたお前に言われたかないわ!」 隆一「やめろ! そー言うのを目クソ鼻クソを笑うって言うんだよ」 大輔「じゃー俺が目クソでお前は鼻クソだ」 琢磨「馬鹿野朗、俺が目クソだ」 大輔「馬鹿野朗、俺だよ」 隆一「あーもう、どっちだって良いよ! とにかく、コレが終わらんと帰れんのだぞ!!」 大輔・琢磨「そうでした〜……」 2人、席に戻る。 ゆっくりと、暗転。
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