私が私でいるために俺として生きる。

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あれは――確か二年前の秋だったはず。 朝は何枚も重ね着しないと寒いくらいだったのに、昼になったら汗を掻くくらい暑くなった日。 何年かぶりに赤トンボを見て、周りに誰もいないのをわざわざ確認してから、走って追いかけた三時間前くらい。 今では友達って胸を張れるような、優しくて、可愛くて、勉強できて、男子にも女子にもモテそうで、男の子の"理想"の女の子になるには目標にすべき子に、胸が痛くなる、鋭くて、冷たくて、私の心をえぐるような、褒め言葉を言われた。 その結果、短くまとめれば私でいるのをやめることを決めた。 なんとなくでそうしたんじゃない。 やめなきゃなって思って、そう一回思ったら、何をしていてもやらなきゃって思うようになっちゃって――。
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