私が私でいるために俺として生きる。

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私、女なんだけど、よく、かっこいいって言われるんだよね。 性格が少し男っぽいからだと思う。 少しはさ、女の子になろうと思って、努力したよ。 話し方、声の高さ、歩き方、座り方、立ち方、文字の書き方、洋服、髪の毛の手入れ、趣味、好み、特技、人付き合い、ちょっとした仕草。 細かいところも変えた。 女にしては低い声を高くして、言葉の最後は少し音を上げて、少しモデルっぽく歩いてみたり、脚が痛くなったけど、女の子座りとかも練習して、猫背をなおして、文字は小さく、丸く、薄くして、ズボンからスカートにして、流行りのファッションとか調べたり、髪の毛の手入れ方法とか、調べてやってみたり、前髪こまめに触って整えたり、レジン工作?とかやってみたり、服とかの好み可愛いのにしたり、キーホルダーづくりとか特技になるまで練習したり、仲の良かった男子と距離とって、どっからどうみても陽キャの子から、いつも目立たない静かな子まで、端から端まで声かけて、知り合い以上にはなって、男子と目があったらニコっと笑ってみたり、クスって笑ってみせたりして… 人生で1番の努力をした。…と思う。  でも、みんなには全然近づけなかった。 目立たない静かな子にだって、女子としては負けてた。 神様っていないんだって思った。 自分を変えるには、神様に頼ってちゃ駄目なんだって。 最初こそ、仲の良い女子と話して、少しずつ女子っぽい仕草を勉強していこうと思った。 時間はかかるけど、何よりも自然だと思った。 みんながしていることを学んで、真似して、無意識にできるとこまでいこうと思った。――でも、あまりにも時間がかかった。 やってれば慣れるかなって、甘く見てた。 そもそも、女子の自然な仕草に気づくのが難しかった。 そんときになってやっとわかった。 私が『女子』が何かをどれだけわかっていなかったのか。 気づいたらさ、女子になる努力をやめてた。 もうやめよう。意味なんてないって。 心のどこかで思ってたんだ。
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