いつから、そこに居るのか

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一振…たったの一振だ それだけで地形が変わった 平だった地面は割れ、周囲に生えていた草木は全て吹き飛ばされている やはり強い…化け物だ 魔族は生きているだけで強くなる 生きれば生きるほど力が増していく 死んだ魔王は1000年生きていたらしい そして目の前に居るエゲルはと言うと… 800年… そう魔王に次ぐぐらい長生きしている つまり、こいつは魔王より少し弱い程度 今の勇者パーティーでは戦えない… (仕方ないか…) 私も魔力を全開放する エゲルに比べれば蟻同然かもしれない (私がこいつと刺し違えば良い…) そう思い1歩進む 「ディア、1人じゃ無理でしょ?」 「勇者、お前の方が無理ださっさと帰れ」 「いや、戦うよ…これが最後になろうともね」 そう言うと勇者は刀を構える 全盛期の勇者が愛用していた刀 使い方が上手ければ上手いほどこの刀という武器は力を発揮するというバフが有る 「なに、コソコソ喋ってんだゴミ共!」 そう言うとエゲルが突っ込んできた ギリギリ反応できた 横に振られた剣を躱す 「勇者!」 「大丈夫、今の僕なら見える」 横から声が聞こえる 「待て、お前まさか」 勇者が唇に人差し指を添えてくる 「静かに、内緒の約束でしょ?」 「終わったら説教だからな!」 ほぼ、全盛期の勇者と私でエゲルを攻める 勇者の方が強い 当たり前だ魔王を倒した時と同じオーラを放っている 1歩で間合いを詰める エゲルの足が吹き飛ぶ 2歩目でエゲルは血を吐きながら倒れていた (結局何もしてないな私は) 安堵の息を吐き勇者を迎え入れる 「お前本当に死ぬぞ?」 私は泣いていた勇者とまだ生きていける事 何より勇者が生きている事 その2つが嬉しくてたまらない 「あ、待って説教の前にこれを」 勇者がポケットから何か取り出した 何やら金属製の輪っかだ 「サイズが合うと良いんだけど」 と、苦笑いしながら私の左手を勇者が持ち上げる 先程までのオーラは微塵も無い一時的な物だったのだろう 「これはなんだ?」 「これはね人間で言うところの結婚 魔族で言うところの番い つまり、夫婦の証さ」 「お、おお、お、お前今こんなことしなくても いいだろ!皆見てるんだぞ!恥ずかしい って!」 「早く渡したかったんだ 受け取ってくれるかい?」 無言で頷く私、多分だが耳まで真っ赤だ 「よかった、帰ってご飯を食べよう 皆にも改めて報告しなきゃだし…」 勇者と私の体が宙を舞う 先程までいた場所に私と勇者の下半身が立っている 「仲良しこよししてんじゃねぇぞゴミ共が」 エゲルが立っていた 体の端からは血ではなく、塵が出ている (気を抜きすぎた…か…) 「この武器はな、私が死のうと思って作った 物だ…つまり魔族、人間両方を殺すことに 特化した武器、お前たち2人だけでも今回 は良しとしよう…次は必ず必ず皆殺しだ」 そう言うとエゲルは空高く跳ね木々を踏み台に飛びながら逃げて行った 「ごほっ」 血を吐く、全身が熱い… 「ソ…フィー回復魔法を勇者に」 「その…必要……は無いよ ごめんね、ディア……約束は守れそうにない」 そう言うと刀を私に刺す勇者 感覚が麻痺しているのか痛みは無い 「今から君を封印する……このまま…2人とも 死ぬよりかは……マシだろ?」 「ま、待て勇者まだ……何か方法が」 お互い上半身から血を垂れ流している 私に至ってはもう塵になり始めている 「ソフィー、ディアの…下半身を」 泣きながら私の下半身を持ってくるソフィー 「待て!待ってくれ勇者!」 泣きながら、叫ぶ私 それでも勇者は止まらない 「ディア僕の分まで生きるんだ」 「嫌だ、嫌だ、勇者お願い私を 一人にしないでくれ」 にっこりと笑う勇者 そして 「青よ その理に応じ 束の間の休息を承らん ゼウゴス・ディア・クロノス」 詠唱を聞き終わると同時に私の意識は遠くなる 「愛してるよディア」 勇者の最後の一言を聞き私の意識は無くなり刀へと封印された
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