いつから、そこに居るのか

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ディアが刀に戻って直ぐ アーシャの回復魔法が終わり 体を一通り動かして異常が無いことを告げる (なんであんなに急いでたんだ? しかも、今日の昼飯食った後の訓練はやたら 厳しかったし) いつもと違う雰囲気に疑問が消えないが、とりあえず出発した 道中特に魔物と遭遇しないまま進んだ 「あ、街から煙が上がってる」 アーシャが気づいた 確かに煙が数本上がってるが、この世界では食事の準備をする際、火を起こした時に出る煙を煙突から外に放出する文化がある 王都の方が煙の本数は多い つまり日常である 「夕方だからな晩飯の準備でもしてるんだろ」 「お腹すいてきたな〜」 「お前、燃費悪すぎない?」 「成長中なんです〜〜」 と、アーシャ (あんだけ食べてんのに何処に消えるんだよ) 俺の2〜3倍は食べてる 「着いたらまずはエアフォルクした子を探す からな」 「背中とお腹がくっつく前に探し終わろうね」 ··········くっつく訳ないだろ····· そんな他愛も無い話をしてると関所に着いた 違和感 関所に誰も居ない いくら、平和になったからと関所に兵士を置かないとはいくらなんでも不用心すぎる 「アーシャ待て、俺が先に行く」 「うん?」 アーシャは特に気にしてないらしい 念の為刀を抜く 最悪の場合ディアにアーシャを連れて逃げてもらう 「って、おい勝手に出てくるなよ」 刀を抜いたと同時にディアが出てきた 「やはりか」 「なにが、やはりか だよ、さっさと刀に戻ってくれ 人目についたら面倒だろ·····」 「心配いらん、さっさと入るぞ」 「お、おいちょっと·····」 ディアの背中を追いかけ関所をくぐると そこには、大量の死体が転がっていた 死体に魔物がたかり、食い散らかしている 「な、なんだこれ」 「言っただろ?着いたら分かる、と」 「ど、どういうことだなんでこんなに人が」 「エゲルが去り際に言ったこと 覚えてないのか?」 「元々の目的の人間は殺したって·····」 ま、まさか 「つまりだ、お前たちが探してる人間を 殺したのだろう そして、増援を呼ばれないように街を壊滅 させたのだ」 「なんで·····」 ディアに1歩近づく 「なんで、分かってるなら 教えてくれなかったんだ! あの時王都に帰ってたら、救えた命も あったかもしれないのに!」 そのまま、ディアの胸元を掴む ディアは振りほどかなかった 「お前たちが魔族の事を何処まで知っている のか、私には分からないがあの時既に この街に生存者は居なかったぞ?」 は? 「私みたいな少し長生きしてる魔族はな 少し離れた場所なら、どのような生物が 居るのか分かるんだ だから、あの時着けば分かると言った」 気がつけばディアに斬りかかっていた ディアは防がなかった 肉に刀がめり込む嫌な感触と共にディアが吐血した 「別に、私を殺したいなら殺せ 勇者の居ない世界に未練もクソもない」 「フェイル!落ち着いて!」 アーシャの言葉で我に返った·········· 刀を抜き、血を拭き取り 鞘に収める····· そのまま歩き出し、生きてる人が居ないか探す 「ディアさん、大丈夫ですか? 今回復魔法を·····」 「大丈夫だ、心配無い」 そう言うとディアの腹に空いていた穴が塞がっていく 「えっ?」 「全く勇者め これは、自殺防止だな?」 傷が塞がり、何事も無かったかのように立っているディア 「だが、傷の治りから見て 私の魔力を元に治っているな つまり、魔力が切れたら死は近くなるな」 そんなことを言い、アーシャに近づく 「すまないな、最初は言うか迷ったのだ」 「べ、別に私は」 と、下を向くアーシャの手は震えている 怒りによるものなのか、悲しみによるものなかは分からない 「今後お前たちが、旅をする過程で この様な惨状の街はいくつも有る と言っても過言では無い 今回に限って言えば、お前たちがどれだけ 早くついていたとしてもエゲルが居たのだ どの道勝てない それなら、終わった後の街に行き耐性を 付ける、それが1番効果的だと思ったのだ」 (ディアさんは、ちゃんと考えてくれてたんだ) そんな優しさに触れてかアーシャの震えは収まった 「何はともあれあいつを追うぞ 残党の魔物だけならまだしも 中位の魔族が居たら勝てん」 「生物の所在が分かるんじゃないんですか?」 「それはそうなんだがな エゲルに存在がバレてるだろうから ここにもし残党が残っているなら 私の事も聞いているだろう 生物の所在が分かるという事は その痕跡も消せるという事だ」 「つ、つまり今魔族が襲ってきても·····」 「あぁ、何もおかしくない」 そう言って歩き出す2人 フェイルの行った方向にとりあえず歩き出す 行く道行く道に死体が転がっている 死体に群れていた魔物達は塵を撒き散らしながら死に絶えている (フェイルがやったんだろうな) 塵が登っている方に歩き続ける と、その内 硬いものがぶつかり合う音がした ! 「おい、アーシャ私よりも後に そのまま着いてこい」 「は、はい分かりました」 走る 音が近づく 開けた場所に出た というより戦闘で破壊されたのだろう 家やら何やらの瓦礫がそこかしこにある 「アヒャヒャヒャヒャ 何にそんな、怒ってるんだー? ここの人間殺したことにかー? アヒ、弱いのが悪いんだろうが馬鹿め アヒャヒャヒャ」 と笑う声と 「死ねぇー!」 と叫ぶ声 見た事ない魔族だが 恐らく下位の魔族だろう 人間を殺すことが楽しくて仕方ないという顔をしている 「ところで〜、お前仲間は? 居るんだろ? エゲル様が言ってたぞー? 人間2人と魔族が一緒に行動してるって 馬鹿な魔族も居たもんだよな〜 エゲル様に見つけてもらった時にこちら側 に着けばいいものを、わざわざこんな ゴミみたいな連中を守るとか 頭の中空っぽなんじゃねぇーの? アヒャヒャ」 ··········別に守ったつもりは無いが フェイルが刀を構えてそれを見たエゲルが帰っただけだし·········· ま、まぁいいか 目の前の戦闘を見続ける 勝負が拮抗している感じどうやらステータス差は今のところ無いようだ 怒りに任せて動いているフェイルと それを嘲笑う魔族 (日頃の戦闘をすれば楽々勝てるものを····· あれは、怒りで我を忘れているな) どうしたものか、戦闘に割って入り あの魔族を殺しても良いが 戦闘訓練の成果を見る為に、見守るのも良いだろう そんな事を考えていると ザシュッ と何かを切り裂く音 どうやらフェイルが横腹を軽く切られたらしい (まぁ、あの程度では死なんわな) と見る私とは反対に 「フェ、フェイルが死んじゃう」 と、顔を青くするアーシャ (あの程度で死ぬのなら私との戦闘で恐らく あいつ10回は死んでるぞ?) と、思いつつ駆け寄ろうとしたアーシャの首根っこを掴む 「ディアさん、離して下さい フェイルが死んじゃいます」 とジタバタするアーシャ ··········ちょっと可愛いなこいつ····· 「落ち着け、あの程度では死なん それよりもよく見ろ アーシャお前も戦闘を見て学べ どのタイミングで回復魔法を掛ければ 効率が良いのか、どの程度なら死なないのか それが、分かってないと魔力の浪費が 凄いことになるぞ」 ジタバタするのを辞めたので ちょこんと地面に置く 「わ、分かりました で、でも死にそうだなって思ったら回復魔法 使いますよ?」 「いや、ダメだ 私が合図するからそれまで待て 幸いあの魔族私たちに気づいてない」 フェイルがよっぽど周りが見えていなかったら応援に入るつもりだ ···················· ディアを刺した後 宛もなくフラフラと魔物を殺していた ディアに八つ当たりしてしまったこと 街の人が皆殺しにされ、それに間に合わなかった自分 間に合ったとしてもエゲルが居た為自分も無様に殺されていたこと ··········あまりにも無力 無力が故の八つ当たりをした自分に更なる嫌悪感が押し寄せていた 気がつけば場所も分からないところに居た 辺りに魔物は居ない どれだけ魔物を殺しただろうか? 正確な数は分からないが時間にしてみれば短いと思う その時一際大きな骨を砕く音が聞こえた その方向に走って行く まだ魔物が居る 死んだ人が食われている 尊厳を踏みにじられている事に耐えられなかった 次第に音が大きくなり 音の正体が分かる 魔族が死んだ人間を食べている 「ん?まだ生き残りが居たのか? アヒャ、皆殺しにしたはずなんだがな〜」 そう言ってこちらを振り向く 「お前たちは何故人を食べる? 食べなくても生きていけるんだろ?」 実際そんなことはどうでもいい····· ただただ殺す理由が欲しかった 「そんなもん決まってんだろ 美味いんだよ、特に女、子供は 肉が柔らかくてな?噛む度に出てくる血が ちょっと甘めのアクセントになってとても 絶品なんだぜ? あ、お前も食うか?」 そう言ってまだ手をつけてないであろう 成人の女性を差し出す 胴体と下半身が別れて血液が足りなくなり絶命したのだろう 肌の色が悪く絶望に満ちた顔で死んでいる 「その人を離せ」 「なんだ?食わねぇのか? なら俺が食うぜ」 と言い そいつはその女の人を頭から食べようとした 「離せつってんだろ!」 それと同時に俺も飛び込む 「なんだよ、楽しい食事中だってのに」 そう言って女の人を死体の山に投げる 俺はまず手を切りにかかった が避けられる 「お前以外と強いな これはエゲル様への手土産にしよう」 エゲル やはりあいつもここに居たのか 「お前を殺してエゲルも殺す」 睨みつけながら言う 「お前エゲル様を知ってるのか? よく生きてたな あの人は今魔族の中で魔王様の次に強い」 「それがどうした」 「つまり、お前が生き残ってるのはエゲル様の 気まぐれ、新しい玩具ってところだろう 困ったな〜お前を殺したら俺まで殺される ··········まぁ半殺しぐらいなら大丈夫か」 と言い口角が上がる魔族 「やれるものならやってみろ!」 そう言って俺はまた、斬り掛かる 今度は魔族の手により受け止められ、反対の手で横腹を軽く切られた
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