いつから、そこに居るのか

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横腹を切られた痛みで少し目を閉じてしまった その隙に魔族は俺の顔を殴る 俺は後方に飛ばされ、立ち上がる頃には魔族が俺との間合いを詰め、次の攻撃を行おうとしていた 間合いをとる 横腹の傷は幸いにも浅い 出血による死はまだ気にしなくていい 問題は あいつと俺のステータス差がそこまで無い事 「おい、人間お前名前は有るか? 殺す前に聞いておいてやる 殺した後にエゲル様に報告しなきゃだしな」 「教える、必要は無い」 「アヒ、強情な奴だな〜 ·····名前有るの良いな〜、俺には無いからな」 「魔族は魔族で十分だろ」 「?お前何を言ってるんだ? 俺は魔族じゃないぞ?」 は? こいつ、魔族じゃないのか? この強さで? 「俺はまだ魔物と魔族の間だ もう少ししたら魔族になれるが 今はまだ魔族達にとっては下っ端だ」 魔族もどきでこの強さ 脳裏にチラッとディアの姿が浮かぶ こいつが、魔族もどきでディアは上位の魔族 そして勇者はそのディアを余裕で上回り 尚且つ、魔王をも倒している 理不尽な強さ 化け物共の集まり そういう、イメージが湧く もしかしたら俺には到達出来ないかもしれない だが····· 「お前何ニヤニヤしてるんだ?きもちわる」 「うるせぇよ····· お前を殺して、エゲルも殺してやる そして、死にゆくお前たちの顔を見ながら 笑ってやるよ ざまぁみろってな!」 戦闘を楽しむ 本来なら、合ってはならない感情だろう だが、楽しいのだ 手を抜いたら死ぬかもしれない状況が 自分よりも強いもの達に溢れている世界が 堪らなく心地良いのである 強者を超える楽しみ 想像しただけで身震いする (こんなところで躓いてたら、夢のまた夢だな) さっきまで頭に登っていた血が全身に行き渡る感触 それに伴い頭が冴える感覚 腹の痛みが和らぐ そして····· 「なんだ?お前魔法も使えるのか? 俺に魔法は効かないぞ?」 ディアが見せてくれた、技を真似る ねこだまし、みたいな物だ だが、こいつとのステータス差はほぼ無い つまり、俺のスピードに追いつけるか追いつけないか 1回見ただけの技 その1回で自分の物にしていかないでどうする? 野垂れ死ぬのはゴメンだ まだ俺は何もしてない まだ俺は強者と戦ってない 強者に挑み、勝つ その瞬間を味わうまでは死にたくない ならどうするか? 簡単である 目の前の敵を殺す ただただ殺す その為の手段は問わない 勝てばいい その為だったらなんだってしてやる 1歩目から全速力 相手の間合いの半歩手前で急速に止まる 止まるが音は無い、静かに、そして纏った魔力を前に流す 「馬鹿め! 一直線に突っ込んで来やがって 何をするかと思えば、ただのイノシシ ではないか!」 そう言って、魔族もどきは俺の魔力を爪で斬る だが 「なんだぁ?あまりにも実態がな·····」 言い終わる前に俺の刀が魔族もどきの体を横半分に斬り捨てる 「わりぃな、お前は俺の踏み台だ さっさと失せな」 横腹の痛みが戻ってくる 「チッ、アーシャに治して貰うか」 そう言い終わると同時に 魔族もどきが上半身だけで俺に斬り掛かる 判断が遅れた、まずい! 「相打ちなら、エゲル様も許してくれる!」 手でガードをする 意味は無い、魔物の爪だ用意で人体など切断出来る 「上出来だな」 声とともに、魔族もどきが霧散する 「ディ、ディア?」 そこにはディアが立っていた どうやったかは知らないが、魔族もどきをワンパンしていた 「上出来だと言っている 1度見ただけで、あれが使えるようになった のだ、使う相手も問題無し」 ·····俺が苦労して倒しかけたやつを ワンパン·····か····· 「な、なぁ今のどうやっ·····」 倒れる·····目の前が暗くなる 意識が遠のいていく (流石に血を流し過ぎたか?) そう思った瞬間俺の意識は闇に放り込まれた
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