いつから、そこに居るのか

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リベリアを出てから数時間後 大きな爆発音が鳴る 後ろを振り返ると 数時間前まで居た街に火柱が上がっていた 「な、なんだこれ」 「エゲルだな 部下を殺した恨みで放ったか 用済みで放ったのか どちらにせよあれがまだ全力では無いことは 確かだな」 (あれが全力じゃないだと? 笑わせるな、あれがただの魔法なら 人類等太刀打ち不可能じゃないか) そんな事を思いながら ふとアーシャの方を見ると 特に表情を変えず、火柱を眺めている 「なぁ、アーシャ あの魔法レベルの魔法を使えるか?」 「さぁ?分かんない」 「もっと、驚くとか無いのかよ」 「だって魔法を打つ瞬間を見てないんだもん 場合によっては出来るかもしれないじゃん?」 「はぁ?ならなんで最初エゲルに攻めた時 応戦しなかったんだよ」 「近接戦闘は私の担当じゃないも〜ん」 「そりゃぁ、そうだがよ」 なんか、良い感じにはぐらかされた 「ほら、さっさと歩け このまま突っ立ってたら王都まで着かないぞ」 ディアに言われ歩き始める 歩き始めてもまだ火柱は上ったままだった 翌日の昼頃 なんとか王都にたどり着く 休憩を挟みながらにしては割と早いペースで着いた 「私は念の為身を隠す 王都が私の封印されている間どのように 変わったか分からないからな」 「分かった、ここまでありがとうなディア」 「なに、礼には及ばん」 そう言い残しディアは刀に戻った 衛兵に事情を説明し王に面会した 「案外スムーズに行って良かったね〜」 「そうだな今回街が1つ消えた事 そして、エアフォルクした子供も死んでた これらを踏まえた上で今度は何を言われるか 言われた後どのように行動するか 考えないといけないな」 「しばらくは休んで良いって事だし 何か美味しい物でも食べに行く?」 「有り」 魔族もどきを倒したことも報告したら、報酬が上乗せされたので金銭的にも余裕がある 「だが、その前に必要なものを買いに行くぞ」 「え〜、明日にしようよ〜」 「明日やろうはバカ野郎だ」 「フェイルのバカ」 必要なものそれは 主にポーション系である アーシャの回復に頼り過ぎてた事 俺一人になった時、アーシャ1人になった時 どうするかを考えて無かった (魔力回復用と治癒用があれば良いか) 「あ、そうだ」 「どした?」 「ディアさんに、晩御飯どうするか聞こう?」 「あいつ、外に出たくないんじゃないのか?」 「んー、でもなんだかんだ3人でご飯食べてて 美味しかったし」 「はぁ·····人目の少ないところ行くぞ」 「うん!」 そうは言ったものの、王都は人が多く人通りの少ないところはそうそう無い 「あ、王様から借りてる部屋行く?」 「あーー、そうするか なら、アーシャの部」 「よし! フェイルの部屋に行ってみよ〜!」 「お、おい待て!」 人の話は聞かないし、話は遮られるし 大変だ それでもアーシャがなんだか楽しそうな事が嬉しいと感じている 「おじゃましま〜す」 「なんにも無いぞ?」 「ふっふっふー 何も無いところに煙は立たないのだよ」 何をドヤ顔してるんだこいつ そんなアーシャを放置し 刀を抜く 「ディア、アーシャが話しがあるそうだ」 刀から紫のような黒のような煙が出てくる 少し待ったら実態を持ち、ディアが出てきた 「アーシャどうしたのだ? というかここ何処だ?」 「ここは!なんと! フェイル君のお部屋です!」 「なんでこいつの部屋に居るのだ?」 「ディアが人目を気にしてたから ここなら大丈夫と思って1回部屋に戻ってき たんだよ」 「ふむ、なるほど で、話しとは?」 「あ、ディアさん今日ご飯どうする? 少し報酬多かったからご飯食べに行こう! って思ってるんだけど」 チラチラとディアを見るアーシャ そんなアーシャを見て、俺を見るディア (いや、俺に振るな) 「なら、行きたい店がある まだ、あるのかは分からないが」 「え!どこどこ? 私も行ってみたい!」 「昔、勇者達とよくご飯を食べた場所だ あそこは美味しかったからな」 ディアに先導され店に向かう俺たち 「ディア外出て良いのか?」 「ざっくり雰囲気だけだが 王都はさほど変わってないと見た それなら、堂々と歩けば問題無かろう」 (まぁ、確かにはたから見たら人間だしな) 「ここのはずなんだが」 着いたところは、衣服屋に変わっていた 「やはり、時間とは無情だな」 アーシャの やっべぇ……どうしよ…… という顔を見て少し笑いそうになった 「それなら俺か、アーシャの部屋で食うか? あそこなら誰も来ないだろうし アーシャに飯作らせようぜ」 「それもそうだな、アーシャの作るご飯は とても美味しい」 「なんか、持ち上げられてない?私 ……まぁ、はい、作ります……」 と、いうわけで食材を買いに出る 酒と肉類と野菜 を豪快に買った 「これ何日分だ?」 「バカもの食える時に食うのだ 野営で食べた量を想像してみろ 腹がはち切れるまで食えることを喜べ」 「よっしゃー!作るぞ〜!」 ⋯⋯⋯⋯ 飯を食べ終わり、アーシャは自分の部屋に戻って行った どうやら、一緒に寝るのが恥ずかしいらしい (野営でテントは別とはいえ、ほぼ至近距離で 寝てたよな?) 女心とは分からないものである そう思いながら風呂から上がった 数日ぶりにゆっくりでき気が抜けているのを感じる (また、あんな緊張感を味わうのか…… いや、悪くないな) と、脱衣所を出た 「ディア、そろそろ俺は寝るぞ」 そう言いながら部屋を歩いていると 窓を開け満月を見上げながら 1杯やってるディアが目に映る 「おう、そうか」 満月を背に振り返ったディアは少し悲しそうだった 「どうしたんだ?」 椅子に座り俺は水を飲む ディアの顔を見ないように聞いた 「この酒な……勇者が好きだったのだ 2人でよくこの酒を飲みながら話したのだ 戦闘の振り返り、旅の合間の街 王都に帰ってきて浴びる程飲むこともあった 今は、そんな奴が居ないことを痛感してる ところだ」 寂しそうな声だった …いや、寂しいのだろう 当たり前だ愛した者が居ない世界というのは恐らくかなり辛い 「それなら、今度俺が付き合ってやるよ 酒飲んだこと無いから飲めるのか 分かんねぇけど」 びっくりした、顔で振り向くディア 「ふふふ、お前が付き合ってくれるのか? そうか……それは是非ともお願いしようかな 1人で呑むのがこんなにつまらないとは 思ってなかった」 「あぁ、いつまでも付き合ってやるよ」 「すまないが、もう少し月を見ながら 酒を飲みたい、邪魔なら屋根に移動するが」 「気にするな、ゆっくりしてくれ」 「すまない……」 「じゃぁ、おやすみ」 「ありがとう、フェイル」 「ふっ、なんだよ今更」 「別に言いたかっただけだ」 「そうかい、じゃぁ寝るぞ?」 「うむ、おやすみだ」 そのやり取りをした後布団に入り 少し考える 愛する者が居ない世界で生きる辛さを 思い出に浸ることしか、救われないのか… そんな事を考えながら眠りについた
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