いつから、そこに居るのか

22/41
前へ
/41ページ
次へ
武器屋に来た 刀に最近慣れてきたからもう一本も刀にしたかったが流石に極東の国の武器となるとなかなか仕入れが難しいそうだ 「んー……刀無いか…」 「他の武器じゃ嫌なの?」 「別に嫌って訳じゃないんだが 使ってる感じ普通の両刃剣とは使い方が違う と思うから慣れるまでは刀を使い続けたいん だよな」 「それなら、私の昔の知り合いに会いに行って みるか?まだ生きてると思うしな」 「お前の昔の知り合いが魔族ならお断りだぞ?」 「バカもの、私はもう魔族とは縁を切っている それに、こんな私と仲良くしたい魔族が いるわけなかろう」 「それもそうだな…… ちなみに何処に住んでるんだ? 王都に居るんならこのまま向かおうぜ」 「いや、住処を変えてなければ森にいるはずだ ここからだと少し遠いが、どうする?」 問題は、時間では無い 「俺が危惧するとしたらこの刀が壊れた時 ディアはどうなるんだ?」 そう、1番の問題は 刀が壊れた時ディアが死亡してしまう可能性がある、という事 一緒に旅をした日数は短いが 訓練を手伝ってくれた事 エゲルが身を引いた事もあるので一応命の恩人でもある そんな相手に何時死んでもおかしくない状態を強いている可能性がある事に後ろめたさを感じているのだ 「それなら多分問題ないと思うぞ? 封印は悪魔で封印だ その刀が私の本体という訳では無い だから、壊れた時私は解放され刀に戻る必要 が無くなるって感じだな それ以外は何も変わらないと思うぞ?」 (確かに封印なら本体が刀って訳では無さそうだな) 「ただし、それは勇者の忘れ形見だ 壊したりしたら許さないからな」 それはそうだろう ディアからしてみれば指輪とこの刀がもはや勇者と言っても過言では無い (それならやっぱり急ぐべきか?) と、悩んでいると 「とりあえず、王様からの知らせを待っても いいんじゃない? 王様から あそこに行け! って言われてからディアさんの知人の方の 住んでるところに近かったら寄る みたいな感じで」 それもそうかもしれない 悩みに悩んで 「アーシャが言った通りにするか 現状王様からの命令待ちなことに変わりは 無いし、何より勝手に動いて王様から怒られ るのも嫌だしな」 妥当な判断だと思う 俺が急いだからと言って刀の使い方が上手くなる訳では無い それなら一石二鳥を狙いに行っても悪くはないだろう 「ふむ…… 困ったな」 「刀は壊さないようにするから安心してくれ それに、使い方にも慣れてきている 俺と同じぐらいの強さの奴なら苦戦はしない と思うしな」 「それは別に問題無い… いや壊されたら問題なのだが 今日時間があるなら、以前のようにお前と 遊ぼうと思っていたのだ」 アーシャがちょっと ムッ とするが 「俺は遊びではなく、死に物狂いなんだがな」 「何を言っている、死なないのだ 遊びと変わるまい」 アーシャが はっ! とする 何を勘違いしているのかは知らないが ディアにとって遊ぶとは、俺にとっては訓練のことである 「それなら今日は素手でやるか」 「素手のお前にどうやって戦うんだよ ステータス差あり過ぎて1分も持たねぇよ」 「組手をするのだぞ? 勇者なら乗り気で 私をボコボコにしていたのだ お前にも訓練ぐらいにはなるだろうさ」 「勇者と俺を比べるなよ……」 と、呆れていると 「ここにフェイルは居るか?」 と、武器屋に入ってくる人物 見た感じ衛兵である 「俺がフェイルだが、何か用か?」 と、名乗り出る 「王様からの伝言だ お前一人で王宮に来いとの事だ」 (1人?) 何故1人なんだ? ディアの存在は公表してないから分かる だが、何故アーシャは呼ばれないんだ? 「俺一人なのか? アーシャも呼ばれると思うんだがな」 「王様からはお前一人連れてきて 仲間にはお前から伝言を伝えろ との事だ」 まぁ、そういう事なら良いんだが…… そういう事なら 「分かった、今から行く 悪いアーシャ少し部屋で待っててくれるか? 用が済んだらすぐに戻る」 「うん、了解」 ビシッ とポーズをとるアーシャ (こいつは、なんとも思ってないのか?) ディアは衛兵がこちらに来る前に刀に戻っている というか俺の腰から刀を抜きそのまま中に入っていった 抜き身の刀が床に落ちた瞬間驚いたがディアが居なくなっているので大方そういうことだろうと思う 「ついて来い」 そのまま背を向ける衛兵 (なにかがおかしい) 無言でついて行くことにする 少し歩き急に衛兵が小道に入った 「こっちの方が近道なんだ」 「へぇ」 確かに近道ではあるが 極端に人通りが少なくなる 理由は明白で、ここら一体は衛兵もあまり近づかない場所 要は裏の世界に通づる人間が根城にしている 戦力的にも衛兵1人でここを通るのならば死ぬ覚悟はした方が良いだろう 「衛兵もここ通るんだな」 「近道だからな」 小道を抜け視界が広がる 整備された道路 建物の建造は表通りとさほど変わらない だが、異様な空気感がある 気軽に立ち入ってはいけない場所 思わず引き返したくなる雰囲気 いずれも、ここを通ることを拒否している 嫌な汗をかきながらも 感覚は勝手に研ぎ澄まされていく 広くそして、鋭敏に 急に衛兵が立ち止まる 「ここは人通りが少なく、尚且つ人が死んで いても驚くことは無い」 そう言いながらこちらを振り返ると同時に剣を抜く衛兵 「お前、王都の人間か? ここら王都の人間はここら辺に寄り付く奴 はなかなかいないんだぜ?」 「私の素性など、どうでもいい 私は上からお前を殺せと言われている」 (上から?てことは魔族の奴らか?) 声色的には男 そもそも衛兵の甲冑を着れる時点で男しか居ないだろう 「そう簡単にやれると思うか?」 刀を構える ディアにも情報は伝わるだろう 「なに、簡単な事だ お前の首と胴体を切り離すまで」 そう言うなり相手は間合いを詰める 甲冑を着ていながらスピードは俺と互角 甲冑を脱いだらスピード面は勝てないだろう 上段から振り下ろされる剣を刀でいなす それと同時に相手の右側に回り込み斬り掛かる 相手は甲冑を来ている為、致命的な一撃をいれることは難しい その為まずは右腕の肘を斬ろうとした 大体の人間が右利きだ利き手を潰せばまともに戦闘は出来ないだろう 刀を振り下ろす、だが 剣で受け止められる 「まぁまぁだな」 (こちとら、ギリギリだってのに!) 「終わらせるか… 主が気に入っていたようだが こんな奴に時間をかけるのは無駄 というものだ」 言い終わるやいなや 相手が剣を振る (受け止めきれない) いなそうにも早すぎて間に合わず 刀で受けてしまった そして相手の方が膂力が高い為後方に吹き飛ぶ 俺の背中で後ろの建物の壁を凹ませる 血を吐き 呼吸がしにくくなる (ダメだこのまま攻められると) 願いは叶わず相手が俺の左肩から胴体に向けて剣を振り下ろす 防御が間に合わず、そのまま己の肉で受ける 「ぐぁぁぁぁああ」 「悲鳴などあげるなみっともない」 そう言いながら相手は首を切り落とす準備を終えていた (やべぇ、まじで死ぬ) 朦朧とする意識の中相手の攻撃を目で追う ぐしゃ という音と共に俺の意識は消えた
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加