いつから、そこに居るのか

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朝食を食べたあと、今日の予定を立てる 「フェイル、一応確認するが 体は大丈夫なのか? 無理しても意味は無いぞ?」 「大丈夫だ そんなことより、俺よりも強い奴が ゴロゴロ居るんだ、ぬるいことしてたら いつまで経っても足でまといになるのは ごめんだ」 そう言いきる 現状ディアが居たから死ななかった場面が多い つまりディア位まで強くなれば強いやつは減ると思っている 「焦ってもしょうがないが…… まぁ、お前の気持ちも分からんでもない」 「ディア頼む、俺に稽古をつけてくれ」 そう言って頭を下げる 誰かに教えを乞うのは初めての経験だし それをお願いするのも初めてだった 「稽古なんて大層なものではないが 付き合ってやろう…… ところで、フェイル自分のステータスを 最近見たか?」 「いや、見てない そんなに変わってないだろ? ディアと会って数日しか経ってないし」 急激な成長をするなんてことは今まで経験してない まぁ、条件的には今までディア程の強敵と戦ったことが無いには無い だが、そんな数日で強くなるなんてことは断じて無いと思っている 「まぁ、たまには見とけよ? お前がどれほど強いのか そして、相手が同等なのか 又はお前より強いのか どの程度強いのか それが分かれば私が相手するのか はたまた逃げるのか その辺の判断をするのにお前自身の ステータスが分からなければ判断が難しく なるであろう?」 その通りだ 言葉にすれば明確になるのに、自分の考えだけで居るとこうも視野が狭くなるのかと実感した 「確かにその通りだな ……そらなら今日ディアとの訓練が終わった 時にでも見てみるよ」 「うむ、そうしてくれ さて……とりあえずフェイルと訓練をするか アーシャはどうする?」 「う〜〜ん 疲れてるからちょっと寝て 起きて晩御飯の支度したら見に行くよ〜」 と、半分目を閉じている いや、もう寝てるか? 「そうか…… それならフェイル私の修行にも付き合え」 「ディアの修行?別に構わないけど 何をするんだ?俺が付き合える修行なんて そんなに無さそうだが」 頭に?を浮かべながらディアを見る アーシャはもう夢の中だ 座ったまま寝てる…… 「お前の修行をしながらの方が効率が良い とりあえず、組手と実践を交えながら やるぞ」 「お、おう分かった」 (ディアの修行ってなんだ? それより、俺でその役割が務まるのか?) そんなことを考えながらアーシャを布団に寝かせる 俺の布団だが床で寝るよりかはマシだと思う 「そういう所だろうな」 「何がだよ」 「やっぱり鈍いな…」 やれやれとディアは頭を横に振る (マジで、どういうこと?) 考えながら家を出てディアと共に修行に出た 王都から少し離れた森の中のスペースで俺とディアは組手と実践を行っている もちろん一撃を与えることもなく俺は床に倒れた (なるほど……こういうことか) ディアの言っていた修行の意味が分かった… 俺を実験台に回復魔法を覚えようとしているのだろう 「やはり、アーシャのようにはいかんな… 傷を与えることは簡単だが治すのが こんなにも難しいとはな」 俺に出来た切り傷や打撲の怪我を治しながら呟いている 「そういえばディア前から疑問だったんだが 魔族は相手のステータスが見えるって 言ってたけどあれはどういう原理なんだ?」 治療をしてもらいながら以前からの疑問を聞く 王都でさえ自身のステータスを見るのに苦労するのだ それを、ただ相手を見ただけでステータスが見えるというのはにわかには信じ難い 「……そうだな…… 何故かと言われると難しいな 実は私も理屈は分からないのだ ある日突然…私の場合は刀から出入り出来る ようになった日には 見えるようになっていたのだ だから、何か理由や原因が有るのか私には 分かってない というのが回答になるな」 (ふむ…つまり魔族特有という訳では無いのか? それなら、他の魔族とディアの共通点を見つけ れば、人類にも見えるようになるのか?) 「そういうことなら、俺にも見えるように なる日が有るってことか?」 「断言は出来ないがそうかもしれないな ……恐らくだが勇者にも見えていたと思う 勇者は戦闘の盤面管理が上手かった 理由が分からなかったが、恐らく ステータスが見えていたからだろう」 (勇者って……チートなのか?) チートだから勇者なのか 勇者だからチートなのか…… イタチごっこが始まりそうである 「さて、そろそろ良いんじゃないか? 続きをやるとしよう」 そう言ってディアは後退する 間合いをとる時は戦闘の始まりを意味する 「そういえばフェイル、今まで全力で攻撃 したことあるか?」 「……分からん」 「そうか…… それなら、私がお前の全力を受けてやろう 抵抗はしない、好きなタイミングで来い」 (えー……やりずら) いきなり全力で攻撃しろ と言われても 全力ってどうやって出すんだ? 日頃魔物と戦う時は速さと正確さを求めている 当たらなければ意味が無い 当たっても急所じゃないなら回数を重ねなければならない つまり、一撃必殺 なんて代物は持っていない (ステータスで殴ればいいのか?) 1番手っ取り早いのはステータスにものを言わせること だが…それで相手を倒せるとは思えないし… ……どうしたものか 「どうした?来ないのか?」 「いきなり全力を出せって言われても いまいち出し方が分からないんだ」 「そうか………… それなら、そこを1歩も動くなよ? 絶対動くなよ?」 ディアが念を押す (いや、何をするか教えてくれよ) そう思った瞬間 ディアの姿が消え 俺の目の前にディアが現れる 拳を突き出し俺の顔に当たるか当たらないかの位置で止めている (は?) 問題はその速さでは無い ……いや、速さも問題なのだが 俺が言いたいのは後ろ 俺の後ろの話し ディアが俺の視界に写ってから僅かの差で産まれた爆風 その爆風は俺の後ろにあった岩や木々を吹き飛ばしていた 綺麗に育っていた木や草などは荒地と同等になっていた 「……は?」 「ふむ……今ので8割弱?ぐらいか」 今のが全力ではないらしい 「殺す気が全く無かったらこれぐらいの力は 出せるのか 良いことを知った」 と、満足げである 言葉が出ない こうも差があるのか? 余波でこうなるのであれば実際に当たるとなると本当に死にそうである 「まぁこういう事だな 自分の力だけで殴るだけでこうなる訳で 無い、スピード、力の運び方諸々を上手く 使えばこうなる さて、実際に見せたのだ 今のお前の全力を見せてみろ」 そう言って数歩下がる 今のを見た後で俺の実力を見せろと言われても正直見劣りするばかりで恥ずかしい気持ちさえある だが、お手本がこうも凄いと目指したくもなる 「笑うなよ?」 「なに、たかだか小僧の一撃だ笑いなどせん」 力の差を理解した上で見たいらしい 実際何をしたか分からない ただ殴る動作をした訳ではないのだろうが見えてないから分からない 構える 対してディアは棒立ちのまま 「行くぞ」 「来い」 ディアの返事と共に俺は距離を詰める ディアはまだ構えていない (このまま殴って大丈夫なのか?) 「私は全力を出せと言ったはずだぞ?」 その言葉と同時に俺は地面に倒れていた 正確には距離を詰める段階でディアが俺の顔面を持ち地面に叩きつけた が正解である 「私が棒立ちしていようが 構えていようが変わらず本気を出せ 殺し合いをしている最中にお前は相手に 対して手を抜くのか?」 見下ろしながら問われる 「殺し合いなら手は抜かないさ」 「訓練中に本気を出せない相手の言葉を 信じろと?」 (今日はやたら、厳しいな) 言われてることは分かる…… だが、いくら魔族とは言えディアを殴る気にはならなかった 「2度は無い、全力を出せ」 そう言って背を向けるディア 起き上がり土を払う 「分かった」 一言返す ディアからの返答は無い 構える もう掛け声はかけない 殺し合いの時は隙を見せた方の負け いちいち 行きます 分かりました なんて、やり取りはしない 無言で始める 殺す気で殴る 簡単なこと 「ふん」 鼻で笑われた気がしたが気にしない (この勢いのままディアの腹を殴る!) そう心に決め 拳をディアの腹にめり込ませた
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