いつから、そこに居るのか

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時は少し戻り、フェイル達と別れた後ディアは1人森の中を走る 先程アーシャを探している最中に目があった人物……いや、人では無いのだが 目が合った場所付近で立ち止まる (この辺にいたはずだが) 辺りを見回すが居ない やはり見間違えだったか? 「そんなにキョロキョロしてどうしたんだ?」 頭上から声がする 「久しぶりに見た顔だったからな……」 頭上に目だけを送り拳を握る 「はは、そうだな それにしても、久しぶりと言う割には 懐かしさに浸っているようには 見えないが?」 悠長に会話をしている相手に対しての私の答えは拳だった 相手は楽しそうに 「ヒュ〜、さすが〜」 と、楽しそうに避けた それと同時に何処からともなく鎌を出す そんな事に構わず私は間合いを詰める 振り下ろさせる鎌を躱しては蹴りや拳を当てに行く だが、相手との間合いが長い分中々当たらない そんなことを少し続けた時 お互いにピタッと動きを止める 鎌が私の首に 拳が相手の顔の前に 止まる 「なんだい?久しぶりに会ったと思えば 随分と強くなってるじゃないか 最後に会った時なんて私のスピードに追い つくのがやっとだったのに いや、待て……お前死んでなかったか?」 「一度にたくさん喋るヤツだな… 死んだかどうかについては目の前に2本足 で立っているのが答えではないか?」 「それは…そうだな! いや〜最近骨の無いやつばかりで飽き飽き していたから久々に楽しめたよ ……ところで ここ数十年間何をしていたんだい? 私は結構噂話好きな方だけど 死んだという話以外は 君に関しては何も聞いてないんだけど?」 「まぁ…あんまり話したくは無いな と言うより、秘密だ」 「ちぇっ…」 「それより昼間から行動して大丈夫なのか?」 「もしかしてディアちゃん……私の事 心配してくれるの?」 キョトンとした顔で言ってくる 「いや、普通に考えてお前が昼間から行動 してたら死ぬだろ」 「いや〜私は今感動しているよ… あのディアちゃんが人の心配をするように なるなんて」 涙を拭く仕草をしながらからかってくる 「……殺すぞ?」 「分かった分かった… まぁ私の種族柄そういう風に思われても 仕方ないな」 「どう考えてもそうだろ…… 吸血鬼が日中堂々と行動してたら心配にも なる…」 そう、目の前の女は私の数少ない知人な上に吸血鬼なのだ 他にも種族を問わず知り合いは何人かいるが日中に堂々と動けないのはこいつぐらいである 「というか私は昔から日中行動しても大丈夫 なのだぞ? 少し弱体化するがな そもそもディアが夜に来るからそういう認識 なんじゃないか? 実際は普通に日中も動いてる」 何を今更と肩をすくめ首を横に振る吸血鬼 「それならそうと早く言ってくれよ… と言うよりなんでお前だけ大丈夫なんだ? ほかの吸血鬼は 日中の動きは避けてるだろ?」 特別なのかスキルの問題なのか全く分からないが種族的にタブーなのは間違えないはず 「あ〜言ってなかったっけ?」 そう言って彼女は人差し指を立てる 「私昔から吸血鬼のトップなんだよ」 「………は?」 いや、聞いてないぞ? というかなんでそんな重要なこと黙ってるんだ? 「ディアちゃんが聞いてこなかったから 言わなかっただけで多分勇者くんも 気づいてたんじゃない?」 空いた口が塞がらないとはこの事では無いか? 実際塞がらないし… 「そういうことは早く言ってくれ… 私たちの世界で言うところのお前は魔王 という事になるのだろう?」 魔族の中で魔王に歯向かう奴は稀にいる 歯向かった奴がどうなるか 私がまだ所属していた時は主にエゲルが屠っていた 偶に強い奴が来て楽しそうにしていたが 基本的には雑魚……と言うよりエゲルが強すぎて相手にならない 反逆したら殺され 従えば人間に殺される どうせ死ぬなら反逆して同族に殺されることを選んだ と、捉えれば悪くない気もしない それでも反逆した時の空気は嫌いだった 無意味なことに命を懸けているようにも見えるから 「なんだい?そんな曇った顔して… もしかして目上の立場にはちゃんと敬意 払うタイプだった? ごめんごめん、そんな事気にしないで 私がこんなんだから皆私の事王として あんまり敬ってないから」 と、笑っている 「コホン、では改めまして」 クソ臭い咳払いをして 「私が吸血鬼・種族の始祖 バン・エリザベート 今まで通りエリって呼んでね 」 最後にはピースまで作って、にこやかに挨拶をしてくるが…… (いや、今更無理だぞ) 始祖と聞いて恐れるとかそういうのではなく シンプルに住む世界が違うのだ なんでも良い、なんでも良いが何かのトップになるのは容易いことでは無い ましてや生まれながらにしてトップそんな存在を目の前にして今まで通りの対応をとる方が難しい……と思うのだが… 「私としては今まで通りに接したいのだが… ちょっと難しくないか? 私は多少強い魔族で エリザベートは吸血鬼のトップ… しかも今まで戦ってきた感じだと全力 じゃないってことでしょ?」 吸血鬼とはあまり正体を見せない まぁ、行動してる時間帯が違うから当たり前のことかもしれない 正体を見せないとはどういうことか? つまり、種族的にどれぐらいの勢力・個人の力があるのかがはっきりしていない 魔族のように至る所で暴れていたら大体の勢力図や個人の力量等も見えてくるが 吸血鬼はそうでは無い 人に対して危害を加えるのも食事の為 だから、殺すことなんて滅多に無い そして、夜間の行動だから他の種族と出くわしたり、争ったりすることも少ない つまり、全容どころか要所要所の情報でさえも掴めていない (エリにいきなり聞くのも気が引けるしな…) 知人に全部教えて貰ったり、聞いたりするのも悪くは無いが中々気が進まないのも相まって、世界的にも私個人的にも吸血鬼という種族に対して不明な点が多い だが… だが、一つだけ言えることが有る 吸血鬼という種族はステータスが異様に高い 我々魔族はステータスが伸び続ける為高いのだが 吸血鬼は違う 個体差は有るが一定の成長と共にステータスは伸びなくなる だが、生まれた時からのステータスが高い、又は吸血鬼化した時にステータスが著しく伸びる為吸血鬼のステータスは古株の魔族に並ぶ 現に今エリと模擬戦を行ったが昼間で弱体化しているにも関わらずステータス面ではほぼ五分と言ったところだろう…… 「エリって呼んでくれ無くなった……」 地面にうずくまりながら泣き言を言っている ……いや?泣いてるなこれ 「エリザベート悪いんだが1つ確認したい 本当に立場とか考えなくて良いのか? 私が思うにお前の気分1つで私なんて 余裕で殺せるだろ?」 1番大事なことである 死にたくは無い、勇者との約束もあるし 今はバカの面倒も見ているつもりだ そう易々と命を投げ捨てることが出来ない 「私はねディアちゃん……友達が欲しいんだよ 長年生きてきた中で友達と呼べる人は皆 死んだし……吸血鬼の皆は親しくはするけど ちゃんと一線は守ってるし…… 私は寂しいんだ……」 と、地面でいじけている (これは……どっちが正解なのだろうか……) 別に今までの関係を続けるのが嫌という訳では無い ただ、無礼を働いて吸血鬼達に殺されかけた時恐らく私もフェイルもアーシャも死ぬだろう (一旦あの二人にも相談したいな…… ん?いや待てよ?それならいっその事) 「エリザベート今から時間はあるのか?」 「あるよ……むしろ有り余ってるよ…… 遊ぶ人も、喋る人も居ないからね……」 ジメジメした空気感を漂わせながら地面に指で丸を書いているエリ 「それなら今私が面倒を見ている者が 居るのだが会ってみるか?」 それを聞いた途端立ち上がり目を輝かせながら 「それは面白そうだ! しかもディアちゃんが 面倒を見てるってことは他種族に嫌悪感を 抱いてない可能性が高い! 行くぞ!何がなんでも私は行くぞ!」 急に元気になった…… (どうやら本当に友達が欲しいんだな……) やれやれと頭を掻きながら王都に戻る事にした 共に歩いている始祖はやたらと上機嫌になったのでこれはこれで良かったと思う
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